総務や経理部、人事部などのバックオフィス部門は、社内の従業員からの問い合わせが非常に多く、本来の業務が滞ってしまうことも少なくないようです。
特に、メールや電話を使った問い合わせは、回答する側・問い合わせる側ともに手間が多く、生産性の低下を招く可能性もあるでしょう。
そこで、バックオフィスの効率化におすすめしたいのが「社内用チャットボット」の活用です。この記事では、社内用チャットボットを導入するメリットや注意点、おすすめのチャットボットや企業の導入事例を紹介します。
バックオフィスの役割
バックオフィスとは、簡単に言うと「社内向けの業務をおこなう部署」のことです。
企業の中には、バックオフィス以外に「フロントオフィス」と呼ばれる、顧客対応を主な業務としておこなう部署があります。バックオフィスには、人事や労務、経理、総務などの部門があり、これらを総称してバックオフィスと呼びます。
バックオフィス部門は企業の根幹を担っていることが多く、経営や企業成長のために、欠かすことのできない重要な部門であると言えるでしょう。
バックオフィスの業務
例えば、人事や労務部門では新卒や中途採用、人事評価などを、労務部門では労務手続きといった業務をおこないます。
経理部門では給与計算、会計処理などを、総務部門では社内のあらゆる手続きに関する社員の窓口対応など、社内的な業務を日々滞りなくおこなっています。
企業の大きさによってそれぞれの部門に複数人数が配置されていることもあったり、一人の担当者が複数の部門を兼任していたりすることもあります。
バックオフィス部門の業務は多岐に渡るため、ミスが許されない責任のある業務や、締め切りが決まっている業務が多いという点も特徴の一つです。
バックオフィスとしてあげられる主な部門は、下記のとおりです。
- 人事・労務
- 経理・財務
- 総務
- 法務
- 情報システム
バックオフィスの課題
さまざまな業務を担っているバックオフィスですが、もちろん課題も存在します。バックオフィスが抱える課題としてよく挙げられるのは、下記の3点です。
- 人材不足
- 業務負荷が大きい
- 属人的な業務が多い
人材不足
少子高齢化により、日本は労働人口が減少してきています。2024年以降には、さらに労働人口は減少していくと予測されており、今後はこれまで以上に少人数で業務を回していかなければならない未来が訪れる可能性があります。
企業の生産性を下げないためには、業務効率化、さらにはバックオフィスの効率化は急務の課題となってくるでしょう。
そのような中で、専門的な知識を求められることの多いバックオフィス部門は、人材不足に陥りがちです。専門知識を求められることから、担当者が離職した場合には、後任を探すことが困難であるとも言えます。
業務負荷が大きい
バックオフィスの業務は、フロントオフィス部門のサポートや社内体制・社内環境の整備のほか、さまざまな事務手続きなど多岐に渡ります。
その一方で、対顧客ではないことからも、フロントオフィス部門に比べると十分に人員がいないことがほとんどです。さらに、バックオフィスとフロントオフィスを兼任している社員がいる企業も少なくありません。
バックオフィス部門は基本的には、少ない人数で多岐に渡る業務をこなさなければならず、一人あたりの業務負荷が大きくなっていることが多々あります。
属人的な業務が多い
属人的な業務が多いという点も、バックオフィスの課題の一つです。
バックオフィスは経理や法務、情報システム部門など、専門的なスキルや知識を持っていなければ務まらない業務が多々あります。
さらに、担当者が離職するとなった場合、業務負荷が大きいことからも、マニュアルの作成や引き継ぎが十分におこなわれないケースも少なくありません。
そのためバックオフィス業務は属人化しがちであり、業務改善にまで手が回っていなかったり、問題が発生しても時間が経つまで発見できなかったりというリスクが高まってしまいかねないのです。
バックオフィスの効率化に役立つツール
このような課題を解消するためには、何をおこなうべきなのでしょうか。人員を増やすことはもちろん重要ですが、システムやツールを使うことで、解決できる部分もあります。
ここでは、バックオフィス業務の効率化に役立つツールを3つ紹介します。
社内向けチャットボット
チャットボットとは、ユーザーの質問に対し、システムが応対をする自動会話プログラムのことをいいます。
カスタマーサポートとしてECサイトやコーポレートサイトなどに導入されているほか、同じような使い方として社内向けのチャットボットもあります。
チャットボットを利用することで、同じような内容の問い合わせへの対応をチャットボットに任せてしまうことが可能です。例えば経理部門であれば、交通費の精算申請など、人事や労務部門であれば、年末調整の書類に関する問い合わせなど、誰もが迷いやすく質問回数の多い内容が挙げられます。
社内向けチャットボットを活用することで、バックオフィス部門に寄せられる問い合わせに自動で対応でき、担当者の業務負荷の軽減のほか、属人化の解消にも繋がります。

RPA
RPAとは Robotic Process Automationの略で、人間がコンピューター上でおこなっている定型的な業務を自動化することを指します。
RPAは、バックオフィス業務と非常に親和性の高い技術です。RPAを導入すれば、これまで人間が手でおこなっていた入力や確認の作業を自動化することが可能になります。
さらに、人間がおこなうことで発生しがちなヒューマンエラーの防止にも繋がり、バックオフィス部門が担う業務の軽減や効率化にもなります。

クラウド型ツール
バックオフィスの効率化には、クラウド型ツールの利用も役に立ちます。例えば、経費精算や従業員の勤怠管理なども、クラウド型ツールでの自動化が可能です。
クラウド型ツールは、ネットに繋がる環境さえあればどこからでも利用でき、近年主流となっているテレワークなどの多様な働き方にも柔軟に対応できます。
例えば、OCR(Optical Character Recognition/Reader)は、紙の文章をスキャンしデータ化するツールです。紙の文書をデータ化することで、ペーパーレス化の促進にも繋がります。
そのほか、近年ではAIの技術と掛け合わせたAI OCRも復旧してきています。 バックオフィスの自動化については、こちらの記事でも紹介していますのであわせてご覧ください。
関連記事:バックオフィス業務の自動化とは?活用ツールやポイントを紹介
バックオフィスにチャットボットを導入するメリット
バックオフィスの効率化として「社内向けチャットボット」「RPA」「クラウド型ツール」の3つを紹介しましたが、その中でも、近年、チャットボットを導入する企業が増えてきています。
バックオフィスにチャットボットを導入する主なメリットは次のとおりです。
- 時間外でも対応できる
- 対応品質を一定に保てる
- 生産性・効率が上がる
- 業務負荷の軽減に繋がる
- コストを削減できる
- 社員の自己解決能力が上がる
それぞれについて詳しくみていきましょう。

時間外でも対応できる
メールや電話で問い合わせをおこなう場合、担当者が不在だと回答を得るまでに時間がかかってしまいます。
チャットボットを導入していれば、24時間、業務時間外であってもすぐに回答を得られ、問題解決にかかる時間が短縮されます。
これにより、業務時間内に殺到する問い合わせの件数も削減できるでしょう。
対応品質を一定に保てる
バックオフィスの担当者が複数人いる場合、担当者によって回答が異なることが起こる可能性があります。問い合わせへの回答をチャットボットに任せれば、対応品質を一定に保つことができるようになるでしょう。
その結果、情報が異なるために、社員の混乱を招くといったケースが起こりづらくなります。
生産性・効率が上がる
チャットボットを導入して活用することが主流になれば、「社員がどのようなことで困っているのか」という情報が集まり、蓄積されて企業全体の問題解決にも繋がります。
これまで属人化しがちであった問題をチャットボットに知識として入れておくことで、社内ナレッジが蓄積でき、業務効率が上がるだけでなく、企業全体の生産性の上昇にも繋がります。
定型的な業務が自動化されることで、マネジメントを強化したりガバナンスに手をかけられたりといった、より付加価値の高い業務に注力できるようになるでしょう。
また、フロントオフィスとバックオフィスを兼任している担当者がいる場合には、バックオフィスの業務が軽減されることでフロントオフィスの業務に充てる時間が増え、企業の生産性アップに繋がります。
業務負荷の軽減に繋がる
バックオフィス部門の担当者が少ない場合、何度も同じ質問を受けて同じ回答を繰り返すことは、非常に大きな業務負荷になります。
この対応に時間を取られることで、本来おこなわなければいけない業務ができなくなってしまいかねません。
チャットボットを導入し活用すれば、担当者の業務負荷の軽減に繋がり、本来の業務に割ける時間も自然と増えるでしょう。
コストを削減できる
バックオフィスを自動化して効率化を図れば、人件費などのコストを削減することが可能になります。
質問への回答という定型的な業務を自動化させることで、バックオフィス担当者の業務が軽減され、残業が減り、業務にかかる人件費を削減できます。
また、その業務が減った分、担当者を一人減らすこともできるかもしれません。これまでより少ない人的リソースで、同じ分量の業務をこなせるようになるでしょう。
社員の自己解決能力が上がる
「疑問を誰に聞けばいいか分からない」「疑問に関する回答がどこに掲載されているか分からない」といった場合に、チャットボットがあれば、自ら問題を解決することができます。
チャットボットに「よくある質問」などをまとめて一元化しておくことで、誰に聞くべきか、どこを探すべきかと考える時間が削減され、社員自ら迅速に疑問を解決できるようになります。
バックオフィスにチャットボットを導入する際のポイント
メリットの多いチャットボットですが、導入しただけで必ずしも成果が出るわけではありません。導入前の準備や導入後の使い方によって、効果が出るかどうかは変わってきます。
チャットボット導入時に確認しておきたいポイントについて解説します。

導入後の目標を明確にする
企業によって抱える問題や課題はさまざまです。まずはその課題を明確にし、業務効率化・プロセスの見直しをおこないます。
チャットボットはそのために導入を検討するものであるため、まずは導入後に「企業がどうなっていてほしいか」という目標を明確にしておくことが大切です。
課題を洗い出し目標を明確化しておくことで、どのような機能を備えたチャットボットを導入すべきか検討がしやすくなります。
搭載されている機能を確認する
プログラミングの知識がなくても簡単に質問や回答のメンテナンスや管理をおこなえるチャットボットを選ぶことも大切です。
プログラミングの知識がなくても運用が可能なチャットボットを選んでおけば、社内に知識を持った社員がいなかった場合、もしくは退職して人材がいなくなってしまった場合でも、管理や運用する人が限定されないため、おすすめです。
手間がかかり、一人ではメンテナンスができないチャットボットを選んでしまうと、迅速に対応することができません。その結果、情報が古いままになってしまい、誰も使わないチャットボットになってしまう可能性もあります。
サポート体制を確認する
チャットボットの導入を検討する際には、それぞれに搭載されている機能を比較することも大切ですが、サポート体制の有無も大切です。
もしチャットボットを利用中にトラブルが生じた場合、まずはチャットボットの問題を解決することが先決となります。スムーズかつ迅速に復旧させるためには、やはりベンダー側の適切なサポートが必要です。
専任のサポート担当者がいるサービスもあれば、営業担当者がサポート業務を兼任しているサービスもあります。万が一のトラブルに備え、素早く正確なサポートを受けられるかという体制も事前にチェックしておくと良いでしょう。
バックオフィスにチャットボットを導入した事例
チャットボットを活用することで、実際にはどれほどの効果があるのでしょうか。ここからは、実際にバックオフィスにチャットボットを導入に成功した事例を紹介します。
帝⼈株式会社
日本初のレーヨンメーカーとして創業した「帝人株式会社」では、人事や総務に関する情報がそれぞれのイントラサイトに散在しており、社員は欲しい情報を即座に見つけることができず、バックオフィスに電話やメールでの問い合わせが集中していたそうです。
当初は問い合わせの数が多いだけではなく、同じような内容の問い合わせが何度もバックオフィスに届いており、社員の精神的な負担も大きくなっていました。
イントラサイトに行けば解決するような情報はすでに蓄えてあったため、その情報にスムーズにたどり着くような仕組みを作るために、チャットボットを導入しました。
その結果、社員はチャットボットが表示するイントラサイトのリンクから、最短で欲しい情報を得られるようになりました。また、「対応する担当者によって知識の偏りがあり、問い合わせの回答が均一でない」という課題も同時に解消できたそうです。
参照:バックオフィスへの問い合わせを自動化!成功の鍵はナレッジ活用!
株式会社クスリのアオキ
明治2年に創業した「青木二階堂薬局」を起源とするドラッグストア「クスリのアオキ」では、事業規模の拡大により従業員から電話やメールによる問い合わせが増加し、バックオフィスの業務がひっ迫していたそうです。
問い合わせ数が多く、「土日に連絡が取れない」「返信が遅い」など、従業員からの苦情も発生していました。問い合わせの対応品質を落とさずに何か良いツールはないか、と考えた時に、チャットボットの導入を検討したそうです。
チャットボットを導入し運用してから2年近くが経ってもなお、チャットボットは順調に利用されているとのこと。特にこの1年間では、2万件を超える問い合わせがあったようですが、そのチャットボットによる正答率は75%もあったと言います。
単純計算で、労務課の業務負荷は1/4にまで減ったことになり、多くの業務時間を削減できていると言えます。今後は他の部署や社外のお客様対応などにもチャットボットを利用していきたいと考えているとのことです。
参照:AIチャットボット FAQサービス「WisTalk」の導入事例 株式会社クスリのアオキ様
株式会社ラクス
「楽楽精算」で知られる経費精算システムや、「メールディーラー」というメール共有管理システムなど、さまざまなクラウドサービスを企業に提供している「株式会社ラクス」は、メールや社内用のチャットなどで、月に200件を超える問い合わせの対応が発生していました。
問い合わせ内容は多岐に渡りますが、主に稟議や社内備品、郵便、宅急便などに関する疑問や質問が総務に寄せられていたそうです。その社内対応に追われ、入金業務や納期のある業務などに支障をきたしていたといいます。
チャットボットを導入した結果、社内問い合わせの対応件数は半分に削減できたそうです。主に入社関連やオフィスのルールなどに関する質問が減り、定期的に新しい社員が入社する環境であった同社では非常に助かりました。
社員のチャットボットの利用状況や要望などを聞いて定期的にアップデートをおこない、さらなる問い合わせ削減を実感しているとのことです。
参照:【インタビュー】総務がAIチャットボットを導入して問い合わせ対応件数を50%削減!
まとめ:チャットボットを導入してバックオフィスを効率化しよう
バックオフィスに社内からの問い合わせが集中し、本来の業務が圧迫されている企業は多くあります。
早い段階で改善を試みないと、部門担当者が疲弊してしまうだけではなく、企業全体の業務効率化や成長が妨げられてしまいかねません。
バックオフィス業務の一部をチャットボットに任せることで、担当者の業務を削減できる可能性があります。導入の前に無料のトライアル期間を設けているチャットボットも多くありますので、試してみるのも良いでしょう。
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