「チャットボットにおける会話デザインとはなんだろう?」「具体的にどのように会話フローを設計すればよいのだろうか?」と疑問を持っている人は多いのではないでしょうか?
チャットボットでの会話のデザインは、顧客の利便性や満足度、あるいは売り上げを左右する一つのポイントです。
しかしその作り方を詳しく知っている方は少ないかもしれません。
そんな方のために、本記事では以下の点について解説します。
- チャットボットにおける会話デザインの概要や目的、難易度
- 会話デザインの基本的な作り方
- より高度にデザインするためのポイント
チャットボットの運用や会話デザインに悩んでいる担当者の方は、ぜひご参考ください。
チャットボットの会話デザインとは
チャットボットにおける会話デザインとは、「顧客が何を言った時に何と返すか」を設定する作業のことです。これを数多く準備しておくことで、あらゆる質問や問い合わせに対応できるようになります。
テキストによる会話はチャットボット上で顧客に提示するほとんどすべてともいえるため、運用する上で最も気を遣うポイントでもあります。ここで失敗しないため、以下3点を理解しておきましょう。
- 会話をデザインする目的は的確にアンサーすること
- 潜在的なニーズに先回りすること
- 現代ではUXデザインに注力するのがトレンド
これは会話デザインを適切に、そしてチャットボットを安定して運用する上で重要です。それぞれについて詳しく解説しますので、参考にしてください。
会話をデザインする目的は的確にアンサーすること
チャットボットにおける会話デザインで最も重要なのは、的確なアンサーを用意することです。実際にユーザーは「問い合わせや疑問を解消してくれるサポートである」と期待してチャットを利用します。
その求めに応えるために会話デザインでは、以下の点を重要視します。
- ユーザーは何について疑問を抱いているのか
- 何を聞かれたとき、どう答えるのか
- もし答えられない場合、どのように対応するのか
- シナリオ形式なら、どのような選択肢を配置するのか
ただしそれだけがすべてではなく、商品紹介ページへ遷移させるタイミングや、回遊率を高めるための施策を考えるケースもあります。もちろんこのような施策は重要ですが、ユーザーの疑問を解決しないままでは、商品にも会社にも興味を持たせられません。
まずはユーザーに的確なアンサーを返すための会話デザインを心がけましょう。
潜在的なニーズに先回りすること
会話のデザインでは、最低限のアンサーはもちろん、顧客の潜在的なニーズを踏まえた上で何を提供するかが重要です。例えば以下の問い合わせを考えてみましょう。
- プロダクトの利用期間はいつまで
- サービスの最低利用料金は?
上記に対する回答を一問一答形式で設定するのは難しくありません。
しかしその問い合わせがなされた裏には、顧客が抱える潜在的なニーズがあるはずです。例えばサービスの最低利用料金がいくらかと聞かれたなら、「より安く利用できるものを求めている」と推測できます。
”その問い合わせがなされた動機”、いわゆる潜在的なニーズを踏まえて、先回りした回答を用意することが大切です。これができればユーザーの目的を達成しつつ、自社にもビジネスチャンスがもたらされます。
現代では会話UXに注力するのがトレンド
現代ではUX(※)デザインの必要性が重要視されており、優先的に注力することがトレンドになっています。その理由は、今後AIやテクノロジーによる顧客対応が広がると見られているからです。
※UX:ユーザーエクスペリエンスの略称。サービスや対応、製品などによって顧客やユーザーが獲得する経験のこと。
実際、チャットボットだけではなく、Apple製品のSiriやAmazonのAlexaなど、人間の代わりにユーザーを導くシステムが活躍の幅を広げています。今後はAIやテクノロジーの進歩に伴い、会話UXの向上はより一般化するでしょう。
もちろんチャットボットも例外ではなく、ここでも会話のUXを高めて、他社との差別化や顧客の満足度向上に向けて努力する必要があります。チャットボットの運用段階で会話のUX向上に積極的であることは、今後の発展においても重要なポイントだと考えられます。
【基本編】チャットボットの会話デザインを作る
上記ではチャットボットの会話デザインがいかに重要か解説しました。続いてチャットボットの会話デザインを作る上での、基本的な流れをおさえていきましょう。
- 担当者をアサインする
- チャットボットの人格を確定する
- 想定されるニーズを絞り込んで回答を用意する
- PDCAサイクルの実施によってニーズの取りこぼしを防ぐ
アサインした担当者を中心に、チャットボットの全体像から一つひとつの会話・シナリオに至るまで順序よく設計、その後はPDCAサイクルを回す期間に入ります。
それぞれのステップについて詳しく解説しますので、参考にしてください。
担当者をアサインする
まず会話デザイン担当者をアサインしましょう。すでにチャットボットの運営担当者がいるならそれでも構いません。
ただし可能であれば会話デザインの専任として、複数人の担当者をつけたいところです。特にユーザーニーズの絞り込みは、それなりに大きなリソースを消費する工程。
できれば複数人で時間をかけて取り組めることが望ましいでしょう。
チャットボットの人格を確定する
会話デザインを作る前にチャットボットの人格を確定しましょう。わかりやすく言えばどのような温度感でユーザーに接するのかを考えます。
機械的に対応させるのか、それともある程度ラフにコミュニケーションを取るのか、これは会社の特性やプロダクトの特徴によって異なるポイントです。温度感を間違えると、ユーザーから見て堅苦しかったり、あるいは不誠実に見えてしまったりします。
自社をある意味で擬人化し、チャットボットにもそれに応じた人格を与えましょう。
想定されるニーズを絞り込んで回答を用意する
チャットボットの会話デザインでもっとも重要なのは、想定されるニーズを絞り込むことです。
- ユーザーは何について疑問を抱いているのか
- 何を聞かれたとき、どう答えるのか
- どの程度の情報量を提供するべきか
- もし答えられない場合、どのように対応するのか
- 答えた後で何を伝えるのか
上記を検討し、重要度が高いものから順序よく回答を用意しましょう。そうすることでより早い段階にて効果を得られます。出現率が低い質問は、後回しでも構いません。
ただしチャットボットにも限界があり、どうデザインしても答えられない複雑な質問もあります。その場合はヘルプデスクやコールセンターなどを案内するとよいでしょう。
シナリオも活用する
チャットボットの会話デザインを実施するときはシナリオも活用しましょう。これは、ユーザーに対する選択肢の提示と返答を繰り返し、求める答えへ導く仕組みです。
例えば「料金について知りたい」と聞かれたときには、「初期費用か、月額料金か」と選択肢を提示します。そこからさらに派生して、支払額や引き落とし日など、細かい答えへと枝分かれさせていきます。
シナリオを利用すれば、やや複雑なユーザーニーズにも答えられるようになります。うまく活用して、チャットボットが対応できる範囲を広げましょう。
PDCAサイクルの実施によってニーズの取りこぼしを防ぐ
最後はPDCAサイクルの実施で、ニーズの取りこぼしを防ぐようにしましょう。
上記まででチャットボットの会話デザインは完成していますが、一度設定しただけでは望んだ効果は得られるとは限りません。チャットボットを運用していると多くのデータが蓄積されます。
そこから「ある質問が多く寄せられているが、シナリオでは想定されていない問題がある」といった気付きがあるはずです。
こういったチャットボットとユーザーのディスコミュニケーションを、PDCAサイクルで見出して修正しましょう。この繰り返しで、ユーザーに対してより適切なアンサーを返せるようになります。
チャットボットの高度な会話デザインで顧客やCVを獲得する5つのポイント
チャットボットの会話デザインを実施するなら、できるだけ高度に仕上げて、顧客やCV(※)の獲得を目指したいところです。簡単なことではありませんが、うまく設計すればチャットボットから直接的に売り上げが上がることもあり得ます。
※CV:コンバージョン。自社が求めていた資料請求や商品購入などのアクションを、ユーザーが実行すること。
これを実現するには以下5つのポイントを意識あるいは実施しましょう。
- CVを取ることよりもUIを高めることに注力する
- 有人サポートと組み合わせる
- できないことはできなくてもよいと考える
- チャットボット自体の使用方法を解説する
- シンプルでキレのある回答を心がける
それぞれについて詳しく解説しますので、参考にしてください。
CVを取るよりもUXを高めることに注力する
チャットボットでCVを取るには、逆説的ではあるもののCVよりもUXを高めることが大切です。なぜならユーザーが利便性を感じることで初めて商品を訴求するチャンスが訪れるからです。
例えばチャットボットで「商品のカラーリングは選べるのか」と問い合わせが入ったとします。そうすると「カラーリングを選ぶことは可能で、男性には青色が、女性にはオレンジ色が人気」と返答できそうです。
このように会話が成立したなら、顧客は当意即妙なコミュニケーションが取れたことに満足感を覚えるでしょう。ここで青色、オレンジ色のカラーリングの商品紹介ページをサジェストしたなら、UXは高いといえます。
しかし質問に答えられてすらいない中で商品を訴求しても、それは押し付けにしかならないため、CVが遠ざかります。つまり、まずはUXという土台を固めて、その上でコンバージョン施策を実施するのが重要です。
レイアウトや操作性もUXに関わりますが、どのチャットボットサービスでも相当高いレベルでこれらが整えられています。したがって自社がやることとしては、ユーザーを想定してチャットの会話やシナリオを設計し、UXの保持を目指すこと といえます。
有人サポートと組み合わせる
チャットボットの会話デザインでは有人サポートと組み合わせることを意識しましょう。いかに優秀なツールといえども対応できる問い合わせには限界があります。
簡単な質問を数多くさばくのはチャットボットが得意とするところ。しかし難しい質問に対して逐一確認しながら回答することは不得意です。
これは人間が補う必要があり、有人サポートへ流し込むべきです。すべての対応をチャットボット任せにせず、必要な場面ではコールセンターへ入電させるようにしましょう。
できないことは、できなくてもよいと考える
チャットボットができないことは、できなくてもよいというスタンスで考えましょう。人間にはできないことができる反面、機械ならではの融通の効かなさもあります。
その限界を無視して、無理に会話デザインを進めてもうまくはいきません。ある程度体裁を整えてもユーザーのニーズや課題を全てクリアするほど設計できないケースも多々あります。
チャットボットができないことは無理に開発せず、確実に対処できる別の方法を考えましょう。
チャットボット自体の使用方法を解説する
チャットボットの利用をユーザーに促すときには、それ自体の使用方法もきちんと解説しておくのがよいでしょう。わかりやすく使い方をレクチャーすれば、ユーザーも無理なくチャットを利用できます。
チャットボット自体が比較的新しい技術であり、使い慣れていない、使おうとしない人も一定数存在するのが現状です。使い方を伝えずに手元を煩わせるなら、チャットボットはむしろユーザーにとって邪魔な存在です。
しかしチャットボットの使用方法を適切に解説すれば、安心して効果的に利用させることが可能です。
シンプルでキレのある回答を心がける
チャットボットの会話デザインではとにかくシンプルでキレのある回答を心がけましょう。
それを実現するためには、以下のポイントを意識することがおすすめです。
- 結論を最初に明示する
- その後で理由を説明する
- 最後にもう一度結論を提示する
- その後でユーザーの背中を押すようなフレージングを差し込む
- 「よい」「使いやすい」といったニュアンスを出していく
上記を意識できていれば、よりわかりやすい返答を提供することが可能です。ユーザーは、加えてチャットで質問したり、再度検索したりする手間をかけずに済みます。
つまり顧客満足度が高まり、さらには回遊率やコンバージョンの向上に繋がるといえます。冗長な表現で何が言いたいかわからない状態だと、ユーザーは満足しません。シンプルでキレのある回答を心がけましょう。
チャットボットの会話デザインにおける注意点
チャットボットの会話をデザインする上では3つの注意点があります。
- チャットボットの人格に一致した会話を徹底する
- チャットボットの運用を放置しない
- 難しいチャットボットを無理に運用しない
上記が守られていなければ、せっかく苦労して作り上げた会話やシナリオ、そしてUXが無駄になってしまいます。それぞれについて詳しく解説しますので、参考にしてください。
チャットボットの人格に一致した会話を徹底する
チャットボットの会話デザインでは、特に設定した人格を常に守るよう心がけましょう。これができないと、ユーザーの不安を煽るからです。
導入段階では、礼儀正しく、ビジネスシーンとしてふさわしい堅い人格を与えたとしましょう。そのあとで「こちらもオススメ!」「こちらのページも見てね」などと述べれば、ユーザーは違和感や適切に管理ができていない印象を感じ、不信感を覚えます。
一度人格を決めたなら基本的には返答するすべてのフレーズで共通させましょう。これは運用を繰り返す中で忘れられがちなポイントであり、常に意識しておく必要があります。
チャットボットの運用を放置してはいけない
チャットボットの運用を放置しないことも重要です。一度設置したら終わりではなく、PDCAサイクルを回して改善を繰り返すことでより高い効果が得られます。
しかし一通り設定が完了すると、継続的な管理やブラッシュアップはおろそかになりがちなものです。引き続き担当者を中心に、会話デザインを改善し続けられるように運用を継続しましょう。
難しいチャットボットを無理に運用しない
難しいチャットボットは無理に運用しないのがおすすめ。なぜなら操作や入力の難易度が高く、会話デザインが難航するケースもあるからです。
例えばプログラミング言語の習得が必要なプロダクトを使いこなすためには、対応できる技術者が必要です。また場合によっては、設計上のミスも起こることも。
できればノーコード型、つまりプログラミングが不要で誰にでも使いやすくデザインされたチャットボットを利用するのがよいでしょう。
まとめ:チャットボットは会話デザインがカギを握る
本記事ではチャットボットの会話デザインについて解説しました。最後に重要なポイントをもう一度おさらいしておきましょう。
- チャットボットにおける会話デザインとは、ユーザーとの会話やシナリオを設定すること
- 会話デザインでは的確なアンサーと潜在的なニーズを読み、UXを向上させる必要がある
- ニーズを読む作業が最も重要かつリソースを消費するため、重点的に注力すること
- より高度な会話デザインを実装し、CVをより多く獲得することも可能
- そのためにはUXを向上させたり、有人サポートと連携するなど様々な工夫が必要
- 一度設定しただけで満足せず、継続的に運用を続けること
会話デザインは明確な答えがなく、深い探求を求められる分野です。常に一定のリソースを確保し、ユーザーニーズを理解できるように動き続けましょう。
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