マーケティングにおける「顧客エンゲージメント」とは、「企業と顧客との間に生まれる信頼性や絆」「長期間にわたって顧客と親密な関係性を築き上げること」といった意味があります。
エンゲージメントは「関わり」や「熱意」を意味します。顧客エンゲージメントとは、顧客がブランドを信頼し、積極的に関わることだと考えると分かりやすいかもしれません。
なお、SNSの評価指標にも「エンゲージメント数」「エンゲージメント率」がありますが、このエンゲージメントは「いいね!」やシェアなどユーザーの積極的なアクションを示す言葉です。
それでは、本題の「顧客エンゲージメント」とはどんなものなのか、他の指標との違い、高めるメリットなどをチェックしていきましょう。
顧客エンゲージメントについて理解することで、あなたが携わるビジネスでの課題・改善点などが見えてくるかもしれません。
顧客エンゲージメントとは
顧客エンゲージメントとは、顧客が商品やサービスを提供する企業に対して持つ信頼感や愛着など、ポジティブな感情的繋がりを意味し、カスタマーエンゲージメントと呼ぶ場合もあります。
企業に対して強いエンゲージメントを持った顧客は、その企業のブランド価値を高く評価し、積極的にその企業の商品を利用する傾向があります。お気に入りの商品やお店として友人に紹介してもらえることにも繋がるでしょう。
顧客エンゲージメントの形成は、優良顧客を増やすこと、企業の売上や収益をアップさせることに繋がります。顧客エンゲージメントはどの企業にとっても軽視できないものと言えるでしょう。
企業や商品に対して高い信頼を寄せる顧客は、他社商品に見向きもせず商品を購入してくれます。顧客エンゲージメントを高めることで、企業は顧客にとってかけがえのない存在となるのです。
「顧客エンゲージメントが高い」状態とは
例えばあなたが好きな飲食店があったとしましょう。そのブランドに対するあなたの「信頼」を表す尺度には以下のような要素が挙げられます。
- そのショップを年間に何回訪れたか
- ショップスタッフとどのくらいの頻度で会話をしたか
- 年間の購入額はいくらか
- その飲食店のSNSにどのくらいアクセスしているか
ここで想起される飲食店は、高い顧客エンゲージメントを構築できており、競合よりも優位に立っています。商品・サービスが欲しいと思った時に真っ先に自社を思い起こしてもらうことが、顧客エンゲージメントの目的と言えます。
商品が欲しいと思った時に真っ先に想起される存在であれば、多少の価格差があっても問題視されることは少ないでしょう。顧客エンゲージメントが高い状態であれば、価格競争に飲み込まれることなく、高い収益性を確保できるのです。
顧客ロイヤリティ(NPS)との違い
顧客エンゲージメントと似た言葉に、顧客ロイヤリティがあります。
ロイヤリティとは、顧客がその商品やブランドのことをどれだけ好きになってくれるか、という「忠誠」を意味します。企業側が「顧客はこういう商品やサービスが好きなのではないか」と推測し、それに対して顧客がどれだけ従ってくれるかという意味合いが含まれています。
対して、顧客エンゲージメントは、顧客側もより良い商品やサービスにしていくために参画したり、積極的に口コミを発信してくれたりするような双方向の関係性があります。
ロイヤリティは企業から顧客に対して一方通行のニュアンスがありますが、顧客エンゲージメントは企業と顧客がよりフラットな関係になり、双方向のコミュニケーションがおこなわれることが前提です。
顧客満足度(CS)との違い
顧客満足度とは、企業の商品やサービスに対して顧客がどの程度満足しているかを示す指標です。
顧客満足度はあくまでも「商品やサービスについて顧客が抱く評価」であり、必ずしも商品を提供する企業そのものに対する評価や関係性に結びつくとは限りません。
例えば、これまでずっとある商品を愛用し続けていたけれど、その商品を提供している企業が社会的にひんしゅくを買うような不祥事を起こしたことにより、購買意欲がなくなるということが考えられます。
これは、商品そのものへの不満(=顧客満足度)が問題になっているのではなく、顧客エンゲージメントが問題になっているのです。
また、高級ブランドへの憧れによくある、「一度も購入したことがないけれど、お金ができたらぜひ購入したい」というように、商品購入前から顧客エンゲージメントが高いという状況も考えられます。
顧客満足度は顧客エンゲージメントを高める一要素ではありますが、企業そのものへの好意を高めるには、より広い配慮や取り組みが必要です。
顧客体験価値(CX)との違い
顧客体験価値とは、顧客と企業との接点を通しておこなわれる、顧客体験における顧客の感情的な価値のことを言います。
企業が顧客に対して質の良い顧客体験を提供し続けることにより、企業と顧客の関係性は長期的なものになり、顧客エンゲージメントの向上に繋がる仕組みです。
顧客エンゲージメントが、商品やサービスを提供する企業に対して持つ顧客のポジティブな感情的繋がりであるのに対し、顧客体験価値は顧客体験における感情的な価値であり、時間軸や持続性が大きく異なります。
顧客体験価値は、商品やサービスを通してもたらされるものですが、顧客エンゲージメントはより長期的な企業と関係性を見る際に用いられる指標と考えると良いでしょう。
どうして顧客エンゲージメントが重視されるのか
従来の主なマーケティング手法は、「良い商品を安く提供すること」でした。しかし、似たような商品やサービスがたくさん出回り差別化が難しくなると、消費者はどれを使っても同じだと感じるようになり、価格競争が激化します。
さらに、インターネットの普及で、顧客の価値観や購買行動も変化してきています。ここでは、顧客エンゲージメントが重視されるようになった理由を具体的に見ていきましょう。
価格競争が激化してきたため
かつては高い付加価値を持っていた商品でも独自性が薄れ、差別化ができなくなることを「コモディティ化」と言います。現代のあらゆる産業でコモディティ化が進み、良い商品を作って売るだけでは競合他社に勝てなくなりました。その結果、価格競争はますます激しくなっています。
こうした中で、競合他社と差別化を図るために重視されているのが顧客エンゲージメントです。価格だけではなくブランドや商品・サービスに価値を見出してくれる顧客との関係を大切にし、期待に応えることで、顧客から商品やサービスを求められるようになれば、激化する価格競争から抜け出せます。
そのためには、見込み客を含む消費者に働きかけ、一人一人を大切に育てる必要があります。誰に、いつ、どのような情報を、どのような方法で提供するかをしっかり考えることが大切です。パーソナライズされた体験を提供して顧客との繋がりを強め、顧客の関与度を高める施策も必要となってくるでしょう。
インターネットの普及により購買プロセスが変化したため
従来、顧客は企業からの情報提供を待ち、与えられた情報を頼りに商品やサービスを購入していました。
しかし、インターネットが広く普及した今、顧客は企業からの発信を待たずに自ら情報を取りに行き、比較検討して購入の意思決定をするようになってきています。顧客エンゲージメントが重要視されるようになった背景には、顧客の購買行動の変化が影響しているのです。
多くの商品やサービスを気軽に比較検討できるようになった今、商品やサービス自体の価値を超えた信頼感や愛着が大きなポイントになります。
膨大な情報の中で顧客に選んでもらえるよう、顧客が情報を得る前に接点を持つことや、強い信頼を獲得して、選ばれる関係を構築することの必要性が高まっていると言えるでしょう。
顧客の知識量が増加したため
かつてテレビCMなどが大きな影響力を持っていた時代には、顧客は企業・ブランドが発信するイメージをそのまま受け取っていました。
ところが、インターネットの普及によって、顧客は膨大な情報の中から商品・サービスを複数の視点から吟味し、自分に適した商品・サービスかどうかを厳しく見極めるリテラシーを身につけてきました。
また、顧客自身がメディアとなってSNSなどでリアルな声を発信するようになり、その口コミが影響力を持つようにもなっています。以前は「企業から消費者へ」という一方通行でしたが、今では消費者自身も情報を発信できるようになっているのです。
そこで、顧客に本当に信頼される企業・ブランドとなるために、企業と顧客双方向のコミュニケーションが重視されるようになりました。一人一人の顧客との結びつきを重視し、リピートしてもらえる顧客、周りの人に口コミを広げてくれる顧客を増やしていくことが重要になっているのです。
顧客生涯価値(LTV)が重要視されるようになったため
顧客生涯価値(LTV)は「LifeTimeValue」の略で、一人の顧客が企業にもたらす価値の総計を表します。
この総計は、一人の顧客によってもたらされた売上や利益の総計を指しています。サブスクリプションなどの「継続性」が鍵となるビジネスモデルが盛んな現代、特に顧客生涯価値が重要視されるようになりました。
顧客生涯価値を高めるには、既存の顧客を維持しなければなりません。そこで、商品の買い切りやサービスの使用開始に特化したマーケティングだけではなく、その後も継続して利用してもらうために、商品購入後のフォローやサービス利用開始後のサポートなどに力を入れる企業が増えてきています。
商品やサービスの内容だけにとどまらない企業のファンを増やすためには、顧客維持が大事です。その指標として顧客生涯価値が重要視されるようになったことも、顧客エンゲージメントが重視され始めた理由の一つと言えるでしょう。
顧客エンゲージメントを高めるメリット
顧客エンゲージメントを高めることによって、企業はどのようなメリットを得られるのでしょうか。
顧客エンゲージメントの高い顧客は継続して自社の商品やサービスを利用してくれるため、企業は安定的な利益を得られます。例えば、愛用している物品が壊れた時、顧客が最初に次の購入候補とするのは顧客エンゲージメントの高い企業の商品なのです。
ここからは、顧客エンゲージメントを高めるメリットについて見ていきます。
企業や商品・サービスの成長に繋がる
商品やサービスを購入した顧客同士で、SNSなどを通じたコミュニティができ、顧客同士で繋がって問題を解決したり、商品を宣伝してくれたりする場合があります。このような積極的なコミュニティ内で発案されたアイディアが、ときに商品開発に繋がることもあるのです。
企業のファンが増え、優先的に商品やサービスを購入してくれる顧客が増えれば、企業は市場での優位性も確立しやすくなるでしょう。市場で優位に立てれば、売上の向上にも繋がり、商品やサービスだけではなく企業も成長していきます。
顧客エンゲージメントを高めることは、企業と顧客双方による「価値の共創」が起こりやすくなると言えるのです。
競争力が上がる
競合との差別化を図り、信頼を勝ち取るためにも顧客エンゲージメントは必要です。顧客エンゲージメントを獲得できていれば、競合に同様の商品があったとしても自社の商品・サービスは選ばれやすくなります。
例えば「○○といえば●●」のように、すぐに連想できるメーカーは、しっかりと顧客エンゲージメントが構築されており、競合に勝てていると言えます。
また、商品・サービスはその時代の波や流行に左右されやすい傾向があります。しかし、顧客エンゲージメントを獲得できていれば、社会情勢に左右されず、長期的に安定した売上が見込めるでしょう。
物が溢れている時代でも、自社商品を認知してもらい、競合と差別化するためにも、顧客エンゲージメントは必要なのです。
リピート率が向上して解約率が下がる
顧客エンゲージメントの向上により、収益の安定が期待できます。なぜなら、顧客エンゲージメントが高い顧客は、信頼している企業の商品を継続的に購入してくれるためです。
既存顧客は新規顧客よりも獲得コストが低いと言われているため、リピート率の向上は収益の安定に大きく貢献します。
顧客エンゲージメントが高まることで、リピート購入やアップセル/クロスセルをしてくれる確率が高まり、それがさらなる顧客エンゲージメントの強化に繋がるといった、好循環が期待できます。
さらに、サブスクリプションサービスなど会員制の事業モデルにおいては、解約が減少するのも大きなメリットです。顧客エンゲージメントが高まり、その商品・サービスのファンになればなるほど、その商品・サービスの継続的な購入・利用を続けてもらえるようになります。
顧客による情報拡散でプロモーション効果が狙える
エンゲージメントの高い顧客は、これ以上ない広告塔であり、パートナーです。エンゲージメントの高い顧客は、口コミによって自ら周囲の家族や友人に商品を宣伝し、他者の顧客エンゲージメントまで高めてくれます。
同じ消費者という立場からの好意的なレビューは、時に企業が発信する広告よりも強力な宣伝効果を発揮します。加えて、好意的なレビューなどをSNSで発信するだけでなく、商品に対する否定的な評価をあえてSNSで発信せず、企業のカスタマーサポートなどに情報提供してくれる確率が高まります。
企業にとっては不満が他の顧客に広まることは望ましくないため、直接改善のヒントとなる情報を提供してくれることは一番望ましい状態であると言えるでしょう。
顧客からのフィードバックを受け取れる
顧客エンゲージメントが高い顧客は、不満を意見として企業にフィードバックし、今後の商品開発に活かしてほしいと考えます。このような貴重なフィードバックを積極的に取り入れることで、企業や製品、サービスを成長させることが可能です。
例としては、商品やサービスに関するアンケートやレビューの記入が挙げられます。このようなフィードバックは、顧客は自分が好きな商品やサービスを自分たちの力でより良くしていこうという動機づけに繋がります。
エンゲージメントの高い顧客のフィードバックを取り入れることで、より顧客ニーズに適した商品やサービスへとアップデートしていけるのです。企業の成長を後押ししてくれると言っても過言ではないでしょう。
顧客エンゲージメントを計測するの必要な指標
ここまで読むと、「自社の顧客エンゲージメントはどうなのか」と気になるのではないでしょうか。
顧客エンゲージメントは、数値化することで客観的に判断できます。ここでは、顧客エンゲージメントを計測するのに必要な指標を紹介します。
顧客ロイヤリティ(NPS)
顧客ロイヤリティは、顧客がその商品やブランドのことをどれだけ好きかという愛着度や信頼度を意味します。
数値化するには、「商品やサービスを親しい友人や同僚に勧める可能性」を0〜10のスコアで表してもらいます。具体的な計測・評価方法については後述しますが、この簡潔なアンケートを実施し、結果を分析することで、顧客ロイヤリティを評価できるのです。
顧客ロイヤリティはすべての企業が導入しているとは限りませんが、顧客エンゲージメントを高める必要性を強く感じている企業では導入が進んでいる傾向があります。
もちろん、顧客エンゲージメントは顧客ロイヤリティだけでは計れません。この後に紹介する他の指標とあわせて多面的に捉えていくことが必要です。
顧客生涯価値(LTV)
顧客生涯価値も、顧客エンゲージメントと大きく関わる指標です。
顧客生涯価値は「購入単価×購入頻度×購入期間」など、どこまで厳密に計測するかによって異なる複数の計算式で数値化できます。「購入単価×購入頻度×購入期間」の例であれば、購入単価が高くても、頻度が低ければ数値は低くなることが分かるでしょう。
顧客エンゲージメントが高い状態は、顧客生涯価値を高める条件がすべて揃っています。多く買いたい、何度も買いたい、継続して買いたい、などの相乗効果により、顧客生涯価値も向上していく仕組みです。
解約率
顧客が商品やサービスを「継続して使いたい」と思っていれば、解約率がおのずと低くなることは理解できるでしょう。つまり、顧客エンゲージメントが高ければ、解約率は下がると言えます。
解約率は、前述した顧客生涯価値とも関係します。そのため、必然的に顧客エンゲージメントとの関わりが深い指標であることが分かるでしょう。
顧客エンゲージメントが低ければ、解約率が上がってしまいます。解約の原因を調査し、迅速にフォローすることで顧客エンゲージメントの低下を防ぐことが大切です。
レビューの数・質
顧客は、良い商品やサービスに出会った時、他の人に広めたいという心理になります。そのため、顧客エンゲージメントが高い企業の商品やサービスは、好意的なレビュー数が多くなるのは当然です。
しかし、ただ数が多いからと言って顧客エンゲージメントが高いとは言えません。レビュー内容が不満やクレームのようなものばかりである可能性があるためです。
レビューは数だけではなく、質にも注目しましょう。SNSで発信される他、口コミサイトなども参考にできます。
SNSエンゲージメント
もし企業のSNSアカウントを運用しているのであれば、そのエンゲージメントにも注目してみてください。
SNSエンゲージメントとは、いいね!やシェア、コメント、URLクリックなど、ユーザーが積極的におこなうアクションを指します。
興味のない、何とも思わない投稿に関して、アクションを起こすことはほとんどないでしょう。SNSで積極的にアクションをおこなうユーザーは、企業のファンである可能性が高いと言えます。
顧客エンゲージメントの計測方法
顧客エンゲージメントは明確に数値で計れる数値ではないため、できるだけ目に見える方法で評価する必要があります。そのためには、顧客がどのような行動をとっているか、分析できる体制を整えなければいけません。
ここでは、顧客エンゲージメントの計測方法として挙げられる事項を紹介します。顧客の行動履歴を分析できれば、顧客エンゲージメントの向上に繋げられるでしょう。
顧客ロイヤリティ(NPS)を数値化する
「あなたはこの商品・サービスを家族や親しい友人に、どの程度勧めたいと思いますか?0~10点で点数を付けてください。」皆さんはこのようなアンケート調査に答えた経験はないでしょうか。
これは顧客ロイヤリティを計測するための質問であり、顧客ロイヤリティを数値化できる指標の一つです。
顧客ロイヤリティでは、前述した質問を顧客に投げかけ、その中で0~6点を付けた顧客を「批判者」、7~8点を付けた顧客を「中立者」、9~10点を付けた顧客を「推奨者」と分類します。その後、推奨者の割合から批判者の割合を引いた数値が顧客ロイヤリティの最終的な指標になります。
例えば、推奨者の割合が50%、批判者の割合が30%ならば「50%-30%=20%」という結果になります。顧客ロイヤリティの数値がプラスに転じていれば一定以上のロイヤリティを確保していることになり、逆にマイナスならば低下していることになります。
昔から用いられてきた「顧客満足度」と異なる点は、収益性に連動するかどうかです。顧客ロイヤリティでは「他者に勧めたいと思いますか?」という質問により未来の行動を数値化しているため、将来的な収益性に連動すると考えられているのです。
解約率とリピート率を算出する
顧客は、購入した商品やサービスで望んだ結果を得られなかったり、競合の方が魅力的だったりすると、商品やサービスを解約します。そのため、顧客エンゲージメントが低いと、解約率も高くなります。裏を返せば、顧客エンゲージメントが高くなれば、おのずと解約率は下がると言えるでしょう。
原因を理解して企業が素早くフォローできれば、顧客の悩みも解決でき、顧客エンゲージメントも高くなります。
さらに、リピート率も確認しましょう。顧客が商品・サービスに満足していればリピート率は高くなりますが、少しでも不満があれば、リピート率は極めて低くなります。
そこで大切なのが、顧客エンゲージメントです。顧客が何に不満を持っているのか理解し、改善できれば、顧客エンゲージメントが高まる可能性があります。
顧客エンゲージメントが高まれば、リピート率も上がっていくでしょう。
顧客アンケートをおこなう
商品やサービスに対する具体的なアンケートを実施することで、より詳しく顧客の状態を知ることができます。顧客アンケートを利用すると、顧客ロイヤリティの数値だけでは分からなかったことがわかるでしょう。
アンケートに使用する項目として、具体的には以下の事項が挙げられます。
- 商品を知った経緯
- カスタマーサポートの丁寧さ
- 使用の感想
数値ももちろん重要ですが、テキストベースでアンケートをおこなうことで、より詳細に「どこを評価しているのか」「どのような点に魅力を感じているのか」を多角的な視点から理解できます。
顧客エンゲージメントを高める方法
顧客エンゲージメントを高めることで、商品を優先的に購入してくれたり、商品を他の顧客に勧めてくれたりといったメリットがあることがわかりました。
それでは、顧客エンゲージメントはどのように高めていけば良いのでしょうか。具体的な方法を見ていきましょう。
顧客データを収集して分析する
まず大切なのは、顧客の年齢や性別、購入傾向、購入頻度など、数値化しやすいデータを集めることです。現在の複雑化した顧客動向を正確に把握するためには、顧客情報を客観的に可視化できるデータとして手に入れることが、マーケティング分析の基本と言えます。
主なデータの入手手段としては、会員登録やアンケート、店頭およびECサイトでの販売データなどのほか、ネット上にあるSNS投稿などのデータを分析するソーシャルリスニングといった方法があります。
次に重要なステップが、収集したデータを分析することです。保有する顧客の「属性情報」や「購買履歴」といったデータを分析することで、顧客をより深く理解できるでしょう。
顧客データの分析方法にはさまざまな種類が存在します。あらゆる分析方法を活用することで、顧客のことを深く理解し、よりパーソナライズされたマーケティング戦略の実施が可能になるでしょう。
カスタマージャーニーマップを作る
どのような体験が顧客エンゲージメントを向上させるのかを検討する際に使えるのが、カスタマージャーニーマップです。
カスタマージャーニーマップとは、顧客の購買行動の中で想定される感情や思考の流れを可視化したものです。カスタマージャーニーマップを作成すると、顧客の一連の購買行動の中での心理を分析できるため、どのタイミングで、どのようなアクションを起こせば良いかの検討材料にできます。
顧客体験の流れとその時々の感情を可視化することで、顧客目線でのアプローチができるようになり、顧客エンゲージメントの向上に繋げられるでしょう。
分析結果をもとに適切な施策を立てて実行する
顧客データの分析、カスタマージャーニーマップの作成が終わったら、最適な施策を立てて実行していきます。
施策を考える際のポイントは、
- 商品の認知から利用までの一連のプロセスを辿ったカスタマージャーニーマップを活用する
- 顧客をカスタマージャーニーのプロセスごとに区分する
- それぞれのターゲットユーザーに対して最適化された施策を考えていく
という順番で考えていくことです。
顧客エンゲージメントを高めるため、顧客が商品を購入したらそれで終わりとするのではなく、カスタマーセンターでの対応などアフターフォローまで含めてしっかりとケアをすることが大切です。
保証対応やカスタマーサポートを万全にすることはもちろん、継続的にSNSなどでキャンペーン情報や顧客の興味を引きそうな情報を発信し、日頃から自社に対する親近感を高めるような取り組みをおこなうのも効果的でしょう。
ITツールを導入して顧客行動をデジタル化する
顧客エンゲージメントを向上させるために、顧客の行動をデジタル化する必要があります。
企業も顧客も、購買プロセスのはじめは、インターネット検索での情報収集です。インターネット上では、各企業がWeb広告やSNS広告などを企業PRとして活用しています。
このような広告の効果計測では、顧客の行動データを追跡して分析します。顧客データに基づいて購買に至るプロセスを分析することで、どうしたら顧客エンゲージメントを向上できるのかを検討できるのです。
顧客行動のデジタル化には、ITツールの利用がおすすめです。ツールを使って効率良く顧客行動をデジタル化し、分析をおこないましょう。
チャットボットやARなどのテクノロジーを活用する
顧客行動のデジタル化には、チャットボットやARなどのテクノロジーを活用するのが賢明です。
顧客エンゲージメント向上には、顧客の属性や購入単価・頻度の他、顧客に対して自社が適切にアクションできているかを確認する必要があります。これらのデータを収集・分析・管理するには、テクノロジーの活用が欠かせないでしょう。
また、顧客エンゲージメントの向上には、より良い顧客体験を提供することも重要です。良い顧客体験ができれば、企業に愛着や信頼感がわき、ブランドが構築されていきます。
しかし、すべての顧客に人間が対応することは物理的に不可能です。対策としては、チャットボットなどを導入し、サイト上で丁寧な顧客体験を提供することが考えられます。
チャットボットを導入すれば、顧客と24時間365日接点ができ、営業時間外であっても顧客の不安や疑問を解消できます。チャットボットは、顧客体験をより良いものにできる可能性を秘めているツールの一つであると言えるのです。
弊社サンソウシステムズでは、月額1万円から導入できる「さっとFAQ」というチャットボットツールを提供しています。顧客体験をより良いものにできれば、顧客エンゲージメントの向上にも繋がります。30日間の無料トライアルも用意していますので、「試しに使ってみたい」という企業にもおすすめです。
顧客エンゲージメント向上のためのポイント
顧客エンゲージメントを高めるためには、顧客の分析、分析結果による改善行動が重要だとわかりました。
ここからは、顧客エンゲージメントを高めるためのポイントについて解説します。
顧客エンゲージメントの現状を把握する
施策を立てて実行する前に、まず顧客エンゲージメントの状況把握が欠かせません。この時に必要となるのが、定量的なデータです。
サイトへの訪問頻度や商品・サービスのリピート率・解約率などは、あらかじめ把握しておきましょう。必要に応じて、顧客アンケートなどを実施するのも効果的です。
自社の立ち位置や市場の状況を把握しておくことは、施策立案や実行の際に役立ちます。まずは現状を把握し、その上で顧客対応をおこなうことが大切です。
顧客それぞれのニーズに応じた対応をおこなう
Webサービスやマーケティングの分野では、顧客一人ひとりにあわせてサービスや情報を最適化するパーソナライズが進んでいます。ECサイトを見ている時に閲覧履歴や購入履歴がある商品と関連の高い商品を勧められるのは、Web上の行動履歴に基づいてパーソナライズしたレコメンド機能によるものです。
自分の興味に合った情報が上位に出てくるSNSや、顧客のニーズに合わせて発信されるメールマガジン、そしてパーソナライズド検索など、パーソナライズの手法は多岐にわたります。
近年では、「この属性の人が、この行動をした時に、この情報を提供する」というような、行動を含めた細やかなパーソナライズも可能になりました。
顧客にとって、自分が求めている情報やサービスを適切なタイミングで届けてくれ、顧客である自分を大切にしてくれる企業であれば、信頼感を感じてくれるでしょう。それは企業にとっても大きな財産となります。
運営陣が協力して取り組む
顧客エンゲージメントを高めるために必要なのは、相手のニーズを汲み取り、喜んでもらえるかどうかを考えて実行することです。
しかし、さまざまな部門・スタッフが顧客対応をおこなう場合、それぞれの対応にバラつきが生じてしまうケースはよくあります。スタッフ間で顧客体験に関する課題や目標が共有できていないと、顧客の満足感や信頼感を損なう恐れがあるのです。
客観的なデータや分析に基づいて現状の課題を明確にし、情報を共有しながら、スタッフが一丸となって顧客体験の向上に取り組みましょう。そうすることで、顧客とのより強固な関係性を築くことができます。
あらゆる接点で顧客体験の向上を目指す
顧客エンゲージメントは、優れた顧客体験の結果として生まれるものです。顧客エンゲージメントを向上させるには、顧客とのあらゆる接点で最適な顧客体験を提供することを目指しましょう。
顧客との接点は、店舗やECサイトだけではありません。顧客が商品やサービスの情報に最初に触れるテレビCMやWeb広告に始まり、情報をチェックしたWebサイトや口コミを確認するSNS、実際の取引に関わる窓口、商品の配達、アフターフォローやメンテナンスに至るすべての過程の体験が顧客体験であり、評価に影響します。
そのため、すべての接点を把握し、一つ一つの接点の顧客体験を向上させる方法がないかを考える必要があります。
ゴールを明確にする
「顧客とどのような関係性になりたいのか」という、企業として実現したい顧客エンゲージメントのゴールを明確にしておくこともポイントです。
もちろん、最終目的は売上や利益のアップでしょう。しかし、近年では顧客エンゲージメントと同様、売上や利益も中長期的な向上が重要視されるようになってきています。
中長期的な売上や利益向上を実現する鍵は、顧客体験にあると言っても過言ではありません。顧客エンゲージメントのゴールを設定する際は、「どのような顧客体験を提供するか」という議論が必要になってきているのです。
顧客エンゲージメントを高めて利益を生み出そう
顧客エンゲージメントとは、商品やサービスの提供企業に対して顧客が抱く愛着や信頼感のことです。エンゲージメントの高い顧客はその企業のサービスを長く愛好し、周囲の人にもそのサービスを宣伝してくれるなど、企業にとって良きパートナーとなってくれる可能性が高い傾向にあります。
顧客との信頼関係であるエンゲージメントを向上させれば、競合他社との差別化ができます。差別化ができれば、厳しい市場競争の中でも生き残ることができるでしょう。
そのためには、顧客体験を改善しつつ、あらゆる接点で優れた体験を提供することが大切です。客観的なデータやマーケティング・テクノロジーを活用して、一丸となって顧客エンゲージメントの向上に取り組みましょう。