近年、Webサイト上でユーザーそれぞれに合ったメッセージやポップアップを表示する「Web接客」が主流となってきています。
普及とともにWeb接客でできることの幅も増えており、サイト訪問者のページ内の行動を分析しながら、さまざまなアクションを設定することができます。ここで重要となるのが、Web接客における「シナリオ」です。
この記事では、Web接客に必要不可欠のシナリオについて、作成するポイントや利用のステップ、定番と言われるWeb接客シナリオについて紹介します。
Web接客に重要なシナリオとは?
Web接客とは、Webサイトに訪問してきたユーザーに対し、個別にメッセージや広告を表示するなどしてコミュニケーションをとることです。
Web接客ツールは、顧客それぞれの行動を分析し、それに合わせた接客をおこなうことが可能ですが、具体的に、いつ・誰に・どのようにアプローチするかが重要となります。このアプローチの手法の一つが、Web接客におけるシナリオです。
Web接客の基本は、ユーザーの不安や疑問を解消し、欲しい情報を与えることです。ユーザーが欲しい情報を得られず商品やサービスに疑問が残ったままだと、コンバージョンに繋がらず、サイト離脱を加速させてしまうことは明らかでしょう。
Web接客におけるシナリオとは、自社サイトを訪問したユーザーに最適なアプローチをおこなうための道筋です。シナリオを設計することでWeb接客をより効果的におこなうことができ、コンバージョンに繋げられます。
Web接客でシナリオを作成するポイント
Web接客をおこなうには、シナリオの作成が欠かせません。しかし、どのようにシナリオを作成したらいいか分からない人も多いでしょう。
まずは、Web接客でシナリオを作成するポイントを解説します。
目標にするコンバージョンを設定する
シナリオを作成する場合は、まずWeb接客で達成したいコンバージョンを決めましょう。コンバージョンとは、一言で言うと「Web接客で達成したい成果」です。
使用するWeb接客ツールによってはさまざまな機能を持つため、それぞれの機能ごとにゴールを決めても構いません。具体的なコンバージョンを設定しておくことで、ゴールから逆算し、Web接客で取るべきアクションが見えてきます。
例えば、商品をもっと売りたいのであれば、ユーザーにおすすめ商品やクーポンを表示して購入を後押しすることが考えられます。あるいは、SNSへのアクセスを増やしたいのであれば、公式のSNSアカウントへのリンクを表示するといったアクションが考えられるでしょう。
コンバージョンを設定することで現状と目標との差が明らかになるため、その課題を解決するためにどのようなシナリオを作成すればよいかを考えられるようになります。
ペルソナを明確にする
シナリオを設計する上で重要なのが、どのような人物を取り込むかというペルソナの明確化です。シナリオを設定する際には、まず自社のサイトを訪問するユーザーを理解する必要があります。
例えばECサイトの場合、情報収集段階・比較検討段階・購入段階など、さまざまなフェーズのユーザーが来訪します。サイトを訪れるユーザーがどのような目的を持っているのかを理解することで、より効果的にWeb接客できるようになるのです。
Web接客においてシナリオ作成をする際は、なるべく具体的にペルソナを設定し、明確にしておくことが大切です。
シナリオの全体像を明確にする
シナリオを設計する際は、ユーザーの行動を見据えて全体像を明確にしておくことが大切です。
Web接客は、まず出迎えから声かけ、不安や疑問の解消、提案、クロージング、アフターフォローといった流れが一般的です。この流れを把握しておくことで、どのようなシナリオを作成すれば良いか全体像が見えてくるでしょう。
なかでも「5W1H」は、さまざまなビジネスシーンでも応用が効く汎用性のあるフレームワークです。
いつ・どこで・誰に・何を・なぜ・どのようにアクションを起こすかを検討していくことで、シナリオ全体がストーリー化され、明確になっていきます。
ユーザーの行動を想定する
シナリオ設計では、ユーザーがサイト上でどのような情報を求め、どのような行動をしているのかを想定することが重要です。
ユーザーの行動は、アクセス解析ツールを用いることで簡単に把握できます。代表的なアクセス解析ツールは、GoogleAnalyticsです。
ユーザーはまずどこのページから流入してくるのか、一番閲覧時間の多いページはどのページか、ユーザーはどのくらいの時間サイトに滞在しているのかなど、これらは全てアクセス解析ツールで把握できます。
シナリオの設計をする上で、ユーザーの行動をデータで把握することは非常に有効です。
検証と改善を繰り返す
シナリオを最初から完璧に作ろうとしてもなかなか難しいものです。シナリオは、一度完成したものを実際に使ってみることがスタートとなります。
出来上がったシナリオを実際に使っていくと、必ず何かしらの不具合が発生します。この不具合をきっかけに、検証と改善を繰り返していくことが大切です。また、検証と改善では、企業内での情報共有が重要となります。
例えばお客様からクレームがあった場合、カスタマーサクセスの部門が対応するのが一般的です。この時、クレームの内容をマーケティングや商品企画部門と共有することで、より具体性のある効果的な改善策を考えることができます。
前向きに改善を繰り返していくためには、部署を越えて情報の共有をおこなうことが大切です。このことについては次の項目で解説します。
部署を超えて情報共有をおこなう
Web接客におけるシナリオ設計は、主にマーケティング部門や商品企画・販売戦略などの部門でおこなわれることが多いでしょう。
しかし、そのような部門は直接的にユーザーと接点を持つ機会があまりなく、定量的なデータでしか情報を得られない場合も少なくありません。
ユーザーニーズを的確に捉えるためには、ユーザーの気持ちを深く理解しなければなりません。そのため、普段からユーザーと接する機会の多い営業やカスタマーサクセス部門と連携し、情報を共有することが大切です。
部署を越えて情報を共有することで、さまざまな視点からのアイデアや意見を集約することができ、より精度の高いシナリオを設計できます。
Web接客でシナリオを利用するステップ
実際にWeb接客でシナリオを利用する際は、適切なステップを踏む必要があります。シナリオ設計は、誰に・いつ・どこで・何を・どのようにのステップで決めていきます。
それでは実際に、Web接客でシナリオを利用するステップをみていきましょう。
1.ペルソナを設定する
まずは「誰に」というターゲットを明確にすることが必要であり、そのためにはペルソナを設定することが重要です。
ペルソナとは、マーケティングをおこなう際にイメージする「具体的なアクションを起こすユーザー像」のことです。ターゲットとは少しニュアンスが異なり、よりプライベートなところまで深く掘り込んだ情報を加えていきます。
対象とするペルソナとして1人の具体的な人物を想定することで、マーケティングの戦略を立てやすくなり、Web接客におけるシナリオの設計の土台作りができます。
2.ユーザーフローを定義する
次に「いつ」「どこで」にあたるユーザーフローを定義します。
ペルソナを作成したことで、ユーザーがサイトやページを訪問する流れや、サイト内を回遊する動きを掴みやすくなるでしょう。そのため、ユーザーフローよりも前にペルソナを設定することが大切です。
Web接客では、ツールを効果的に使うことで、目的に合わせてユーザーをページに誘導することもできます。まずは既にいるユーザーのフローを分析し、コンバージョンに結びつくユーザーフローを改めて定義してみることがおすすめです。
3.ニーズを抽出する
次に「何を」に当たるニーズの抽出をしていきます。ユーザーのニーズを抽出するには、具体的にユーザーの分析をおこなうことが重要です。
このステップでは、最初のステップで作成したペルソナと、これまでのサイトやページへのアクセス数などを参考に、ユーザーニーズを分析していきます。
Googleなどの検索エンジンを使いどのようなキーワードが多く検索されているのかを把握し、ユーザーが自社のサイトに「何を求めて訪れているのか」を整理していきましょう。
4.Web接客ツールに入力する
最後に「どうやって」にあたるWeb接客ツールへの要素の入力をおこないます。
コンバージョンは具体的な施策を実行することで結果を生みますが、その前にここまでの4つのステップをしっかり踏んでいないと、成果は上がりにくいです。
もしまだWeb接客ツールを導入していないのであれば、どのようなツールを使えばコンバージョンに繋がるのかをあらかじめ調べることが大切です。
使うツールによって使える機能はさまざまですが、例えば、ECサイトで商品を実際に購入してもらうことをコンバージョンとする場合であれば、ポップアップタイプのツールが有効です。このツールを使うことで、ユーザーそれぞれに合った広告を表示することができ、コンバージョンを高めるだけでなく、サイトからの離脱を抑えることもできます。
その他、顧客満足度の向上に重きを置く場合は、チャットタイプのツールを使用するのがおすすめです。サイト上でチャットを使って気軽に疑問を解消することができ、ユーザーがアクションを起こしやすくなります。
Web接客シナリオの定番5つ
最後に、最も重要かつさまざまなサイトで高い効果を見込める、定番のWeb接客シナリオを紹介します。
WebサイトのCVRを改善するヒントが欲しい方や、Web接客におけるシナリオのイメージを掴みたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
情報提供型シナリオ
お知らせやインフォメーションの用途でよく使われるシナリオです。「あなただけに」「今だけ」など、うまく限定感を盛り込むことで、ユーザーに訴求したい情報を表示します。
例えば、サイトを訪問するユーザーが高齢の方に寄っている場合は、なかなか自分からサイト内を回遊しない傾向にあるかもしれません。そのような時にこそ、このようなポップアップによる情報案内が有効となりやすいのです。
ユーザーが離脱しそうになった時に、「ちょっと待った!こんな限定情報があります」というポップアップを表示することは、ユーザーの離脱防止に貢献するだけではなく、限定情報の内容によっては、商品購入に繋がる可能性もあるでしょう。
検索提案型シナリオ
実店舗で買い物をする時のようなイメージで、「あなたが探しているものは何ですか?」といった声かけをおこなうシナリオです。ECサイトなど、商品数が多かったりユーザーのニーズが幅広い場合に有効です。
例えば旅行サイトなどの場合、レジャー目的で商品を探している人のほか、ビジネスを目的としてサイトを訪れる人もいるでしょう。ニーズにあった商品を探しているタイミングを見計らってポップアップを表示することで、ユーザーが対象商品を見つけるられずに離脱してしまうことを防ぎます。
案内のタイミングはさまざまで、他にもイトを訪れたタイミングで「どのようなものをお探しですか?」とポップアップで複数の種類を提示するなども考えられます。
案内型シナリオ
ポップアップに表示される「次へ」をタップして進んでいく、チュートリアルのようなシナリオです。商品やサービスの概要・魅力などを簡潔に伝える際によく用いられます。
検索提案型シナリオと同じように、「何をお探しですか?」「◯◯はお持ちですか?」といった質問を投げかけることから接客がスタートします。
そこから、会話形式でサービスの紹介を交えながら案内していくことで、ユーザーに商品やサービスを理解させながら、ニーズに沿った接客を行っていくのです。
商品やサービスの内容が分かりづらいことがCVRに関わっている場合に、「理解できれば購入や申込は増える」といった仮説を立て、その仮説を実証していく形のシナリオです。
後押し型シナリオ
ユーザーにもう一歩の行動を促したい時に有効なシナリオです。迷っている、もしくはまた時間をおいて考えようと思うタイミングを見計らって、後押しをする文言やコンテンツなどを表示します。
商品やサービスに興味・関心はあるものの、最後の行動をまだ起こしきれないユーザーに対して背中を押すことで、コンバージョンに繋がることがあります。
「興味・関心はあるものの行動を起こせないユーザー」をどのように見分けるかは難しいですが、最も参考になるのは、ページの閲覧時間です。後追い型のシナリオを使用する際には、このユーザーの見分け方も重要となってくるでしょう。
不安解消型シナリオ
ユーザーが不安や疑問を持つタイミングで適切な情報を提供し、安心して行動を起こせるように促すシナリオです。
ユーザーは、よっぽどその商品やサービスに興味がない限り、利用案内やFAQなどを自ら見に行くことはあまりありません。商品やサービスに興味・関心のあるユーザーを逃してしまうことのないよう、ポップアップを表示させることで不安解消をこちらから働きかけ、離脱を防ぎます。
コンバージョンまであと一息のところまではいくものの行動には至っていないユーザーを、「何かしらの不安や疑問を持っているユーザー」と仮説を立て、そのユーザーに絞ってポップアップを表示させることで情報提供をおこない、コンバージョンに繋げる仕組みです。
的確なシナリオを作成しWeb接客で顧客満足度をアップしよう
Webサイトを使用した販促やマーケティングが重要となっている昨今、注目されているのがWeb接客ツールです。
適切なシナリオを設計したWeb接客ツールを導入することで、CVRの改善や顧客満足度の向上のほか、業務効率化の実現にも繋げられます。
Webサイト上で質の高い接客をおこなうことは、収益の拡大に直結する重要な要素です。この記事で紹介したシナリオ設計のポイントや手順をしっかり押さえた上で、Web接客ツールの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
Web接客ツールと並べられるツールに、チャットボットがあります。Web接客ツールが「チャット」と「ポップアップ」を併用して接客するのに対し、チャットボットはユーザーの質問や疑問に「チャット」で自動的に対応するツールです。つまり、チャットボットもWeb接客ツールの一部なのです。
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近年、Web接客ツールとしてチャットボットを導入する企業が増加しています。「さっとFAQ」は無料トライアルも実施できますので、この機会にぜひ一度お試しください。