- 属人化とはなんだろう?何がそんなに危険なのか
- 今のところメリットを感じている、何が問題かわからない
- 属人化の対策として、何が考えられるだろう?
上記のような疑問を持っている人は多いのではないでしょうか?属人化は短いスパンで見ればメリットがあるという場合もありますが、そのまま放置すると部門を一時的に停止させかねないデメリットになることも。
その点について知らない人もいれば、何かしら対策が必要だと感じている人もいるでしょう。そこで本記事では以下について解説します。
- そもそもの属人化の意味と、対策を求められる理由
- 属人化が起こる5つの原因とその対策、Q&A
企業や部署を混乱させかねない属人化。この現象に対処したい担当者はぜひ参考ください。
そもそも属人化とは?対策が求められる理由は?
問題に対処するため、まずは以下について確認しておきましょう。
- 属人化の定義
- 対策が強く求められるようになった理由
この点を踏まえることが、属人化と向き合う上で重要です。
属人化=ある業務が特定の人物にしか処理できない状態
属人化とはある業務が特定の人物にしか処理できない状態です。別の言い方をすれば「業務標準化」されていないことでもあります。
つまりマニュアルや手順書がなく、他の人物では再現できない状態です。
例えばあるツールを用いた市場分析について操作方法が難しく、とある人材にしかできない状態だったとしましょう。そして他の誰もが、それを再現できないなら、属人化が起こっていると言えます。
対策が強く求められるようになった理由・デメリット
属人化の対策が求められる理由は企業に対する悪影響が大きいと理解されてきたからです。ある業務について担当できる人物が一人しか居なくても、部署にいる内は困りません。しかし本人が退職や休職でいなくなってしまうと、その業務は立ち行かなくなります。
また新しい担当者が引き継ぎを受けられない場合、全く何も知らない状態で一からやり方を模索しなければいけません。
そもそも前任者と全く同一の状態を再現することは不可能ともいえるため、この作業自体が合理的ではありません。だからこそ属人化には対策や予防が求められるようになりました。
属人化が起こる理由5つを事前に知っておこう
属人化が起こる原因は、大きく分けて5つ挙げられます。
- 業務内容の専門性が高く属人化しやすい
- 自分自身の地位や利得を守りたい
- 業務自体が忙しい
- 難易度が高く関与できる人材が限られる
- 古いシステムの複雑化で新たに関与しづらい
それぞれについて詳しく解説しますので、参考にしてください。
業務内容の専門性が高く属人化しやすい
業務内容の専門性が高い場合は属人化しやすいと言われています。専門的なスキルや豊富なノウハウを求められるなら、そう簡単に担当者は見つけられません。その人物が何年も業務を担当すれば、属人化が起こるのは当然です。
マニュアルや解説書を作ろうにも、専門性が高いとそれが難しくなります。またオペレーションを教育で伝えることも簡単ではありません。そうこうしているうちに属人化するというのが、よくあるパターンです。
自分自身の地位や利得を守りたい
自分自身の地位や利得を守りたいがために、意図的に属人化する場合もあります。要するにナレッジや手順を共有せず、自分だけの秘密にします。そして属人化させて自分自身の価値を高く見せようという方法です。
社会における地位や利得を守るのは悪いことではありません。自分自身の価値を高めるの大いに推奨されるべきですが、それが同時に業務標準化に逆行する点が問題です。
しかし一個人が企業あるいは経営者目線で動くかといえばそうとも言い切れず、地位や利得を優先して(組織から見れば)不要な属人化を意図的に進める場合があります。
業務自体が忙しい
業務自体が忙しい場合は属人化が起こりやすいと言われています。そもそもオペレーションを教育する機会すら奪われるからです。
本来であれば業務と並行して、担当者が別の人間に手順や注意事項をレクチャーできます。しかし業務が忙しいと、時間的にも精神的にも、オペレーション教育を実施することは難しいでしょう。また、その教育の対象者となる人物も業務に追われていることも多いはず。
つまり業務自体が忙しいと標準化しづらく、結果として属人化が起こってしまいます。
難易度が高く関与できる人材が限られる
難易度が高く関与できる人材が限られてしまうことも属人化の原因です。中には能力が高くないと、こなせない業務も多々あります。
難しい内容であれば「自分もやってみたい」と名乗り出るケースも少なく、作業に関与する人材はそうそう増えません。それをマニュアルに起こすことも多くの場合は困難です。結局は最初に担当した、能力の高い人物一人に属人化してしまうケースがあります。
古いシステムの複雑化で新たに関与しづらい
古いシステムの複雑化で新たな人材が関与しづらいケースもあります。部署ごとで組まれているシステムは、常に最新化され、シンプルになっているわけではありません。
10年以上前のプロダクトが複雑に絡み合い、もはやその時代から部署にいる人でしか理解できないような仕組みが成立していることがあります。
現代のシステムに慣れ切っている、部署に配属されて間もない場合は、今の状態を理解できずに作業をこなせません。そうすると、古いシステムに慣れ切った人物の間でのみ属人化が起こります。
【補足】属人化はかならずしも悪いことではない
ただし属人化が常に悪いことかと言えばそうでもありません。標準化されていないからこそのメリットもあります。
- 担当者が信頼できるなら、多少任せきりでも問題ない
- 本人の専門性が向上し、スキルアップやノウハウの獲得につながる
- 営業担当者などであれば、顧客と顔馴染みとなり、特別な信頼関係を作れる
例えば上記の点は、属人化したからこそのメリットです。あらゆる仕事をまんべんなくこなすだけでは得られません。
ただし注意して欲しい点は、必ずしもたった一人だけに業務を担当させ、それ以外の人にナレッジを秘密にする意味はないということ。スキルやノウハウをシェアして共有すれば、属人化した際のデメリットを避けることが可能です。
属人化を解消するための対策(標準化)は5つ考えられる
属人化には一部メリットもありますが、デメリットの方が大きいため、基本的には解消・予防できるように対策する必要があります。つまり、標準化を目指すことがセオリーです。
代表的な方法として以下が挙げられるでしょう。
- 全員が理解できるマニュアルや手順書を共有する
- 第三者によるチェックを入れて相互理解を深める
- 業務内容そのものを簡潔かつわかりやすくする
- ナレッジを共有・継承する
それぞれについて詳しく解説しますので、参考にしてください。
全員が理解できるマニュアルや手順書を共有する
業務標準化の基本は、全員が理解できるマニュアルや手順書を共有することです。
属人化における最大の懸念は、ある日突然、業務が立ち行かなくなること。それでもやるしかないのですが、実際に運用方法が安定するまで相当な時間と失敗が必要でしょう。
しかしマニュアルや手順書があれば問題ありません。担当者本人のみならず、ほとんどの人材がその業務内容を再現することが可能です。
マニュアルや手順書は、属人化を解消する上でもっともシンプルかつ効果的なやり方。優先的に取り組み、誰しもが業務をこなせるように標準化しておきましょう。
マニュアルや手順書は、担当者が中心となり、業務内容を洗い出すところから始まります。しかしすぐに誰しもが理解できるような物にはなりません。
別の社員の指摘などを参考にしつつ、誰にでもわかりやすいマニュアルを作り上げていきましょう。
第三者によるチェックを入れて相互理解を深める
第三者のチェックを入れて相互理解を深めることも重要です。段階的に確認すれば、その業務がどうなっているのか理解できます。そうすればすべてを学習できなくとも、ある程度の流れや作業の意味合いをシェアできるでしょう。
これにより少なくとも、たった一人しか作業要項を理解していないといった、リスキーな状態は避けられます。チェックが強化されれば作業の精度も高くなるはずです。
業務内容そのものを簡潔かつわかりやすくする
業務内容そのものを簡潔かつわかりやすくすることも重要です。属人化が起こる原因として、作業が複雑すぎる点が挙げられます。そして能力の高い人しか担当できなくなり、属人化から抜け出せなくなることもあります。
しかし業務内容そのものを整理して簡潔かつわかりやすくすれば、多くの人材で再現することが可能です。そうすれば標準化は達成されたと言えるでしょう。
ナレッジを共有・継承する
ナレッジを共有・継承することもよいでしょう。属人化して、本人が会社を離脱したとしても、残された知識や知見があれば業務を引き継ぐことが可能です。
普段から本人に、業務における気づきなどを報告させたり、シェアさせたりすることがよいでしょう。もちろん引き継ぎの際には、業務内容を正確に伝達させます。
さらに社内共有ツールやナレッジシステムの活用もよいでしょう。これを活用すれば、得られたノウハウや情報が、簡単に蓄積、共有されます。
顧客対応の場合、チャットボットの利用も有効です。これはテキスト形式でユーザーと会話し、自動的にソリューションを提供するシステム。
WEBサイトを見ていて、右下に小さなチャット画面が表示されたことはないでしょうか?それこそがチャットボットです。
これにはダッシュボードやデータバンクがあり、顧客から寄せられた問い合わせ内容や頻度などが統計にまとめられています。これを参照すれば、本人が引き継ぎやシェアを行わなくても、ナレッジを継承することが可能です。
ちなみに当社でもチャットボット「さっとFAQ」を提供し、ナレッジ共有をサポートしています。興味がある方はぜひ一度ご利用ください。
関連記事:社内での効率的なナレッジ共有の進め方は?ツール5選と浸透させるための方法を解説
属人化に関するよくある質問Q&A
本記事では属人化について詳しく解説しました。最後によくある質問へQ&A形式で返答します。
- 属人化の何が悪いのかわからない
- 属人化してはいけない業務と、そうではない業務を知りたい
属人化に関する問題をきちんとクリアした上で、実際の取り組みに移りましょう。
属人化の何が悪いのかわからない
属人化の問題点は、ひとえに「替えが効かなくなること」に挙げられます。属人化が起こっていると、担当者がいなくなったときの業務は、ほとんどの場合ストップしてしまうものです。
例えばある顧客と特定の営業担当者が15年来の付き合いをしていたとしましょう。そして会社はその顧客とほとんど関わっておらず、極度な属人化があったとします。
そうすると営業担当者がいなくなったとき、顧客は会社に今まで通りひいきしてくれる可能性は低いと言えるでしょう。属人化により、会社ではなく営業担当者との付き合いが成立していたからです。
というように属人化は、今まで数年、数十年かけて積み上げてきたものが担当者の離脱でリセットされる可能性を秘めています。いくら細かいメリットがあったとしても、放置してよい問題ではありません。
属人化してはいけない業務と、そうでない業務を知りたい
属人化してはいけない業務として以下が挙げられます。
- バックオフィス業務
- 問い合わせ窓口
- ルート営業
- セキュリティ管理
属人化しても構わない業務は、ほぼありません。強いていうならさほど優先順位が高くないツールの運営などが、これに当たるでしょう。基本的に属人化が許されるケースはないと考えて問題ありません。
まとめ:属人化はデメリットの方が大きいため対策が必要
多くの企業が課題として抱えやすい属人化。一見合理的に見えますが、実際のところは楽をしているだけであまり有効な施策だとは言えません。
属人化ではなく、標準化を進めるために重要な手段をもう一度おさらいしておきましょう。
- 全員が理解できるマニュアルや手順書を共有する
- 第三者によるチェックを入れて相互理解を深める
- 業務内容そのものを簡潔かつわかりやすくする
- ナレッジを共有・継承する
あらゆる方法で業務内容を多くの人に周知しましょう。そうすることで属人化におけるリスクを低減し、標準化した安全な状態で業務を進めることが可能です。
本記事を参考にぜひ予防や対策、あるいは現状の問題をクリアしましょう。