「最近、顧客体験(CX)という言葉をよく聞くけれど、具体的に何を指すのだろう?」
「顧客満足度やUXと何が違うのか、社内で説明を求められて困っている」
「売上の伸び悩みを打開するために顧客体験の向上が有効だと聞いたが、何から手をつければ良いかわからない」
このような悩みをお持ちのマーケティング担当者や経営者の方は多いのではないでしょうか。現代のビジネスにおいて顧客体験(CX)の向上は価格競争から抜け出し、顧客から選ばれ続けるための重要な鍵とされています。
そこで本記事では、顧客体験(CX)の基本的な定義や重要性、具体的な改善ステップを網羅的に解説します。最後までお読みいただければ顧客体験(CX)の全体像を深く理解し、社内での説明や施策の立案に自信を持って取り組めるようになるでしょう。
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顧客体験(CX)とは
顧客体験(CX:カスタマーエクスペリエンス)とは、顧客が商品やサービスを知る段階から、購入、利用、アフターサポートに至るまでの一連のプロセスで経験する、あらゆる体験の総和を指します。
単に製品の機能性や価格だけでなく、その過程で顧客が抱く感情的な価値も含まれるのが大きな特徴です。まずは、顧客体験(CX)の基本的な概要を理解しましょう。
顧客が企業と接する「すべての体験」が対象
顧客体験は、顧客と企業のあらゆる接点(タッチポイント)で生まれます。例えば、以下のようなものがすべて顧客体験の構成要素です。
フェーズ | 具体的な接点(タッチポイント)の例 |
---|---|
購入前 | SNS広告、Webサイトの閲覧、比較サイトのレビュー、店舗での接客、資料請求 |
購入時 | ECサイトの決済プロセス、製品の梱包、店舗の雰囲気、スタッフの対応 |
購入後 | 製品の使いやすさ、取扱説明書、カスタマーサポート、メルマガ、アフターサービス |
これらの多様な接点で積み重なる一つひとつの体験が、顧客にその企業やブランドへの総合的な印象を抱かせていきます。
つまり、顧客体験の向上は特定の部署だけでなく、企業全体で取り組むべき課題です。大切なのは、各タッチポイントでの体験を最適化し、一貫性のあるブランドイメージを築くことです。顧客の期待を上回る体験を提供することで、ロイヤリティの向上や口コミによる新規顧客の獲得、売上増加につながります。
さらに、顧客体験を継続的に改善するためには、顧客からのフィードバックを積極的に収集・分析することが不可欠です。アンケートやレビュー、ソーシャルメディアのモニタリングなどを通じて、顧客の声に耳を傾け、改善点を見つけ出す必要があります。
得られた知見を迅速にサービスや製品に反映させていくことで顧客満足度を高め、競争優位性を確立できます。
混同しやすい「顧客満足度(CS)」「ユーザー体験(UX)」との違い
顧客体験(CX)を理解する上で、よく似た言葉である「顧客満足度(CS)」や「ユーザー体験(UX)」との違いを明確にしておくことが重要です。これらの関係性を理解しておくと議論のズレを防げ、より的確な施策を考えられます。
顧客体験(CX)と顧客満足度(CS)、ユーザー体験(UX)の概念は、評価する「範囲」と「視点」が異なります。
用語 | 概要 |
---|---|
顧客満足度(CS) | 点の評価。特定の接点(商品購入時、問い合わせ時など)における満足度を測る指標 |
ユーザー体験(UX) | 線の評価。特定の製品やサービスを利用する一連の過程における体験(使いやすさ、感動など) |
顧客体験(CX) | 面の評価。CSやUXを含む、ブランドとのすべての接点を通じた総合的な体験 |
このように、CSやUXはCXを構成する重要な要素の一つであり、CXはそれらすべてを含む、より長期的かつ包括的な概念と捉えると良いでしょう。例えば、顧客満足度(CS)は購入後の電話サポートの質や返品対応の迅速さ、店舗スタッフの丁寧な対応などが該当します。
ユーザー体験(UX)は、製品やサービスを利用する際に得られる顧客体験全般を指します。Webサイトの使いやすさ、アプリの操作性、製品のデザインなどがその例です。
一方、顧客体験(CX)は、顧客が企業とのあらゆる接点を通じて得る体験全体を包括的に捉えたものです。ブランドイメージやマーケティングコミュニケーション、購入後のフォローアップなど、顧客とのすべてのやり取りが含まれます。
つまり、個々の顧客満足度(CS)の向上や優れたユーザー体験(UX)の提供は、最終的に顧客体験(CX)の質の向上につながります。企業は、顧客とのあらゆるタッチポイントを最適化し、一貫性のあるポジティブな体験を提供することで、顧客ロイヤルティを高め、長期的な関係を築くことが可能です。
したがって、CX戦略は顧客中心のビジネスモデルを構築する上で不可欠な要素といえます。
ビジネスに顧客体験(CX)が重要な2つの理由
これほどまでに顧客体験(CX)が重要視されている背景には、市場の成熟とデジタル化の進展があります。モノや情報が溢れる現代では、製品の機能や品質だけで他社と差別化を図ることが非常に難しくなりました。
また、顧客はインターネットを通じて簡単に情報を比較できるため、企業は常に価格競争のプレッシャーにさらされています。このような状況で企業が生き残るためには、価格以外の付加価値、すなわち「優れた体験」を提供することが不可欠なのです。ここからは、顧客体験(CX)が重要な理由を深掘りします。
1.価格競争から脱却し、ブランド価値を高める
優れた顧客体験は、「この企業だから買いたい」「このサービスだから使いたい」という強い動機付けを生み出します。
顧客が製品やサービスそのものだけでなく、それを通じて得られる心地よさや感動に価値を感じられると、企業は価格だけで判断されなくなります。結果として、不毛な価格競争から一歩抜け出し、独自のブランド価値を確立することが可能です。
さらに、顧客体験の向上は顧客ロイヤルティを高め、リピート率の向上につながります。顧客が積極的に口コミを広げてくれるようになり、広告費をかけずに新規顧客を獲得することも可能です。つまり、顧客体験への投資は短期的な売上向上だけでなく、長期的な企業の成長を支える重要な戦略といえるでしょう。
2.顧客ロイヤルティが向上し、LTV(顧客生涯価値)が最大化する
心地良い体験を提供された顧客は、その企業やブランドに対して信頼や愛着(顧客ロイヤルティ)を抱きます。ロイヤルティの高い顧客は、継続的に製品やサービスを利用してくれるだけでなく、より高価格帯の商品を購入し(アップセル)、関連商品を追加で購入する(クロスセル)可能性も高まります。
さらに、満足した顧客は自身のSNSや口コミで好意的な情報を発信してくれるため、新たな顧客を呼び込む宣伝効果も期待できるでしょう。具体的には、以下のようなメリットを生み出します。
顧客体験向上の効果 | ビジネスへのインパクト |
---|---|
リピート率の向上 | 安定的な収益基盤の構築 |
アップセル・クロスセルの促進 | 顧客単価の上昇 |
好意的な口コミの拡散 | 新規顧客獲得コストの削減 |
顧客からのフィードバック | 製品・サービスの改善 |
これらの効果が組み合わさることで、一人の顧客が取引期間を通じて企業にもたらす利益である「LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)」が最大化され、事業の持続的な成長へとつながります。したがって、顧客体験の向上は単に顧客満足度を高めるだけでなく、ビジネスの根幹を強化する重要な戦略といえます。
例えば、顧客体験を重視したマーケティング戦略を展開するとブランドイメージが向上し、より多くの顧客を引きつけることも可能です。また、顧客の声に耳を傾け、迅速かつ適切に対応すれば顧客との信頼関係を深め、長期的な関係を築けます。
このように、顧客体験の向上は短期的な売上増加だけでなく、長期的な企業価値向上にも大きく貢献します。
顧客体験(CX)を向上させるための具体的な3ステップ
「顧客体験の重要性はわかったけれど、具体的に何から始めれば良いのだろう?」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。顧客体験の向上は思いつきで施策をおこなうのではなく、体系的なステップに沿って進めることが成功の鍵です。
ここでは、誰でも実践できる基本的な3つのステップに沿って紹介します。
STEP1:現状把握|NPS®などの指標で客観的に測定する
改善の第一歩は、自社の顧客体験が今どのような状態にあるのかを客観的に把握することから始まります。感覚だけに頼らず、データに基づいた指標を用いて現状を測定しましょう。
代表的な指標には以下の3つがあります。
指標名 | 測定内容 | 質問例 |
---|---|---|
NPS® (Net Promoter Score) | 推奨度 企業やブランドを他者に勧めたいか | 「この企業を友人や同僚に勧める可能性はどのくらいありますか?」 |
CSAT (Customer Satisfaction Score) | 満足度 特定の接点における満足度 | 「今回のサポート対応にご満足いただけましたか?」 |
CES (Customer Effort Score) | 顧客努力 課題解決までにかかった労力 | 「問題を解決するために、どのくらいの労力が必要でしたか?」 |
これらの指標を定期的に計測することで、自社の強みや弱みを客観的に把握しながら、改善活動の成果を評価できます。
また、上記の指標に加え、顧客維持率(Customer Retention Rate)や解約率(Churn Rate)なども重要なデータです。さまざまな指標を組み合わせることで、顧客体験全体の健全性を深く理解しながら、より効果的な改善策を講じられます。
STEP2:顧客理解|カスタマージャーニーマップで顧客視点を手に入れる
次に、収集したデータだけでは見えてこない、顧客の行動や感情の背景を深く理解するステップに進みます。ここで非常に有効なのが「カスタマージャーニーマップ」の作成です。
カスタマージャーニーマップとは、顧客が製品やサービスを認知してから購入・利用に至るまでの行動、思考、感情の移り変わりを時系列で可視化したものです。マップを作成するプロセスを通じて、企業視点ではなく顧客視点で体験を捉え直し、課題や改善のヒントを発見できます。
マップ作成の基本プロセス | |
---|---|
1. ペルソナ設定 | ターゲットとなる典型的な顧客像を具体的に描く |
2. ステージ定義 | 認知 → 検討 → 購入 → 利用 → 継続といった顧客の行動段階を定義する |
3. タッチポイントの洗い出し | 各ステージで顧客が企業と接する点(Webサイト、店舗、SNSなど)を特定する |
4. 行動・思考・感情の記述 | 各ステージ・タッチポイントでの顧客の具体的な行動、思考、感情を書き出す |
5. 課題の発見 | 顧客が不満やストレスを感じるポイント(ペインポイント)を特定する |
カスタマージャーニーマップは、顧客体験を最適化するための強力なツールです。作成には関係部署を巻き込み、ワークショップ形式で進めるのが効果的でしょう。定期的に見直し、顧客の変化に合わせて更新していくことも重要です。
STEP3:施策の実行と改善|顧客の声(VoC)を起点にPDCAを回す
現状把握と顧客理解を通じて課題が明確になったら、具体的な改善策を立案・実行に移します。重要なのは、施策を実行して終わらせるのではなく、その効果をあらためて測定し、継続的に改善を重ねる「PDCAサイクル」を回し続けることです。
この改善サイクルの原動力となるのがアンケートやレビュー、SNSへの投稿といった「顧客の声(VoC:Voice of Customer)」です。なぜなら、顧客の生の声は製品やサービスに対して実際に感じていること、考えていることを直接的に教えてくれるからです。
また、顧客の声を分析する際にはテキストマイニングツールを活用し、頻出キーワードの抽出や感情分析を行って、潜在的なニーズや不満を可視化しましょう。
さらに、顧客セグメントごとに分析をおこなうことで、よりパーソナライズされた改善策を実行できるようになります。顧客の声に耳を傾け、迅速かつ柔軟に対応することで、顧客満足度の向上やビジネス成長へとつながります。
なお、顧客の声は単なる意見として捉えるのではなく、ビジネスの羅針盤として活用すべきです。収集したデータは、製品開発やマーケティング戦略、顧客サポートなど、あらゆる部門で共有し、組織全体で顧客中心の視点を育てていくことが重要です。
定期的な進捗レビューをおこない、改善の効果を定量的に評価するとより効果的なPDCAサイクルを確立できます。
【業界別】明日から真似できる|顧客体験(CX)向上の成功事例
ここでは、顧客体験の向上に成功している企業の具体的な事例を紹介します。異なる業界の取り組みから、自社のビジネスに応用できるヒントを見つけてみましょう。
【小売業界】カインズ:顧客の声が店舗を変えた改善サイクル
カインズの事例は、顧客中心主義の重要性を示しています。単にアンケートを実施するだけでなく、その結果を真摯に受け止め、具体的な改善につなげることで顧客満足度を飛躍的に向上させています。例えば、店舗に立つ従業員がお客様から直接伺ったご意見を本部へ報告し、商品の品質向上に役立てているのも一つです。
同様に、企業は顧客の声に耳を傾け、データに基づいた意思決定をおこなうことで顧客体験を継続的に向上させています。この姿勢が競争の激しい市場において顧客ロイヤリティを高め、持続的な成長を可能にする鍵となるでしょう。
参考:商品戦略|カインズ
【飲食業界】スターバックス:デジタルとリアルが融合した心地良い体験
スターバックスは、高品質なコーヒーとサードプレイスという空間体験に加え、デジタル技術も活用して顧客体験を向上させています。モバイルオーダー&ペイは待ち時間を短縮し、顧客の利便性を高めるだけでなく、店舗オペレーションの効率化にも貢献しています。
さらに、アプリを通じてポイントプログラムや限定キャンペーンなどを展開することで顧客エンゲージメントを深め、リピーターを増やしているのも特徴です。これらの取り組みが、スターバックスが競争の激しいコーヒー市場で優位性を保ち続ける要因といえるでしょう。
【B2Bソフトウェア】HubSpot:顧客の成功を徹底支援する仕組み
B2Bにおいても顧客体験が重要なのは、HubSpotの事例からも明らかです。同社は単なるツール提供に留まらず、顧客の成功を支援する体制を構築しています。HubSpot Academyなどの学習コンテンツや活発なコミュニティは、顧客がツールを使いこなし、成果を上げるための強力なサポート基盤です。
このような手厚いサポートは顧客満足度を高め、長期的な関係構築に貢献します。つまり、B2B企業は自社の提供する製品やサービスだけでなく、顧客のビジネス成長を支援する視点を持つことで競争優位性を確立できるでしょう。
顧客体験向上を加速させるおすすめのツール
顧客体験向上のための施策は多岐にわたりますが、すべてを人力でおこなうのは非効率です。実際に「顧客体験を向上させたいけどリソースに余裕がない」と感じている方も多いでしょう。
顧客体験の向上はテクノロジーを活用すると、より効果的かつ効率的に施策を進められます。ここでは、特に取り組みやすい分野で役立つツールを3つ紹介します。
チャットボット:問い合わせ対応の効率化
チャットボットは、単なる効率化ツールではありません。顧客とのコミュニケーションを深化させ、ロイヤリティを高める戦略的な投資です。導入にあたっては、FAQの網羅性だけでなく、顧客が求める情報にたどり着きやすい検索性も重要な要素です。
また、チャットボットは導入のハードルが低く、運用開始後も改善を続けやすいツールを選ぶことが、成功への鍵となるでしょう。運用しやすいツールを導入することで、長期間にわたって顧客体験を向上させることも可能です。
さらに、顧客からのフィードバックを積極的に収集し、FAQの内容やチャットボットの応答を継続的に改善すると顧客体験はさらに向上します。将来的には顧客の行動履歴や購買データと連携し、パーソナライズされた情報提供をおこなうことで、より高度な顧客サポートを実現することも可能です。
企業はチャットボットを積極的に活用し、顧客との良好な関係を構築していくことが求められます。なお、「さっとFAQ」であれば、Excelから簡単に会話データを作成できます。プログラミングやAIの知識が必要ないため、初めてツールを導入する企業であっても試しやすいでしょう。月額1万円から利用できる点も大きな魅力です。
CRM:顧客との関係性を管理
CRM(Customer Relationship Management)は顧客の属性情報や購入履歴、問い合わせ履歴といったデータを一元管理するためのツールです。部署ごとにバラバラに管理されがちな顧客情報を集約することで、社内の誰でも顧客の状況を正確に把握できます。
これにより、各顧客に合わせた一貫性のあるパーソナライズされた対応が可能となり、顧客体験の向上に大きく貢献します。さらにCRMは、顧客との関係を深めるための戦略的な意思決定を支援できるツールです。
例えば、蓄積されたデータを分析することで顧客のニーズや傾向を把握し、より効果的なマーケティング施策や製品開発につなげることが可能です。CRMを活用すれば顧客セグメントに基づいたターゲティング広告の配信や顧客満足度調査の実施、ロイヤリティプログラムの導入など、顧客獲得から維持までの幅広い施策を展開できます。
MA:マーケティング活動の自動化
MA(Marketing Automation)はマーケティング活動を自動化・効率化するツールです。特に、メール配信やWebサイトでの情報提供において力を発揮します。
MAの強みは顧客の行動履歴に基づいて、個々の顧客に最適化された情報を提供できる点です。例えば、Webサイトの閲覧履歴やメールの開封状況などを分析し、顧客が興味を持つ可能性の高い情報を適切なタイミングで配信します。
これにより、画一的な情報提供ではなく、顧客一人ひとりのニーズに合わせたコミュニケーションが実現し、顧客との関係性を深めることが可能です。結果として、顧客満足度やロイヤリティが向上し、顧客体験の質を高めることにつながります。
まとめ:顧客体験を向上させて企業価値を高めよう
この記事では、顧客体験(CX)の基本からビジネスにおける重要性、向上させるための具体的なステップ、さらに成功事例までを解説しました。顧客体験の向上は、一度きりのプロジェクトではありません。
市場や顧客の変化に対応しながら、常に顧客視点で自社のサービスを見つめ直し、改善を続けていく文化を組織に根付かせることが何よりも重要です。まずは顧客体験向上の第一歩として、自社の顧客が「どこで」「どのように」自社と接しているのかをチームで洗い出すことから始めてみてはいかがでしょうか。
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