在庫削減をしないと、企業の在庫管理コストが増えるほか、過剰在庫となり商品の価値が低下する恐れがあります。また、キャッシュフローの悪化にもつながりかねないため、適正在庫を維持できるよう、在庫管理、在庫削減に取り組まなければなりません。
この記事では、在庫削減の必要性や具体的に取り組む手順などについて解説しています。また、在庫削減を効率よく進めるための方法として、在庫管理システムについても取り上げているため、ぜひ参考にしてください。
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目次
在庫削減をするべき理由
まずは、なぜ在庫管理をするべきなのか、その理由について解説します。在庫を抱えており、なんとかしないといけないと考えている方はぜひ参考にしてください。
在庫管理のコストがかさむ
在庫管理をおこなう理由の一つは、在庫が増えると管理コストが増大するためです。在庫が多いと、その分だけ保管スペースが必要になり、場合によっては新たなスペースを確保しなければならないこともあります。また、在庫管理をする担当者の人件費も増えてしまうので、自社の収益圧迫にもつながりかねません。
棚卸しの際には、現物の数量や保管場所を確認する必要があるため、在庫が多いほど確認作業にかかる手間やコストも増加します。その他にも、管理スペースの維持費や光熱費、さらに製品によっては品質劣化を防ぐための空調費用など、さまざまなコストが発生するので、過剰な在庫はキャッシュフローをさらに悪化させる要因となります。逆に、在庫を削減できれば無駄なコストを抑えられ、収益やキャッシュフローの最適化につながるので、適正在庫を維持することが重要です。
在庫の商品の価値が下がる
いつまでも商品が販売されず、在庫として保管され続けると、品質の劣化や流行遅れが生じて不良在庫となり、商品自体の価値が下がる恐れがあります。
また、長期間の保管によって、材質の劣化や管理中の一部破損などの問題が発生することもあります。このようにして不良在庫となった商品は、本来の価格で販売することが難しくなり、安い価格で売らざるを得ません。その結果、企業の利益は減少してしまいます。
商品の価値が下がったとしても、販売できればまだ良い方で、最悪の場合、劣化によって商品を廃棄しなければならないこともあります。この場合、廃棄コストだけがかかるため、利益はありません。
このような事態を避けるためにも、在庫削減に取り組み、適正な状態をキープできるようにしておく必要があります。
キャッシュフローが悪化する
在庫を過剰に抱えてしまうと、キャッシュフローの悪化にもつながります。これは、在庫は資産であり、お金を払って仕入れているものであるにもかかわらず、それを販売できる在庫として残ってしまうことで資金が滞留してしまうためです。
そもそも、企業はお金を払って商品を仕入れ、それを売ることによって利益を上げています。そのため、商品を売るまでは資金が減った状態です。しかし、在庫として残ったままだと、いつまで経っても利益を得られないため、キャッシュフローは改善されません。
また、在庫が倉庫などで長期間保管されることにも注意が必要です。なぜなら商品の仕入れから販売、資金回収までにはタイムラグがあるためです。このような点を踏まえると、キャッシュフローを悪化させないためにも、在庫削減に取り組む必要があることが理解できます。
在庫削減を進める手順
ここでは在庫削減を進めるための具体的な手順をご紹介します。在庫削減の必要性は理解しているものの、実際に自社の在庫をどのように減らせば良いのか、その方法がわからない方は、ぜひ参考にしてください。
現状の把握
在庫削減をおこなうにあたっては、まず現時点でどれだけの在庫を保有しているかを把握する必要があります。どこにどの商品がどれだけ保管されているのか、在庫管理の方法はどうなっているのか、管理方法に問題がないかなどの点を洗い出してください。
適正在庫の設定
在庫の現状を把握した上で、過不足のない適切な在庫量がどれくらいかを考え、適正在庫を設定してください。適正在庫とは、日々の業務に支障をきたさない範囲での必要最小限の在庫量を指します。在庫が少なすぎると販売機会の損失につながり、多すぎると管理コストの増加などを招くため、適切な数量を以下の要素を参考に検討してください。
- リードタイム
- 安全在庫
- 需要変動
リードタイムとは、商品の注文から納品までの期間のことです。リードタイムが長い場合、納品までに時間がかかるため、在庫を多めに確保する必要があります。
また、安全在庫とは、急な需要増加や供給遅延など、予期せぬ事態に備えて確保しておく在庫のことです。欠品リスクを回避するために必要な要素といえます。
需要変動とは、過去の販売データや市場の動向などを基に、需要がどの程度変動するかを見極めることです。商品によっては需要の予測が難しい場合もあるため、データを確認しながら適正在庫を慎重に検討する必要があります。
これらの要素を踏まえた上で、自社にとっての適正在庫がどれくらいかを確認し、それに合わせて在庫管理に取り組んでください。
在庫削減方法の検討
適正在庫がどれくらいかがわかったら、既存の在庫を減らすための方法を検討してください。在庫削減の方法としては、以下のようなものがあります。
- 5S
- 需要予測
- 在庫管理システムの導入
これらについては後ほど詳しく解説します。
在庫削減の実施
在庫削減方法が決まったら、実際にその方法を実施します。実施に当たっては、社員への周知を徹底し、業務負担が大きくならないように注意してください。また、実施後はどのような効果があったのか振り返りをおこなうことも大切です。
在庫削減の具体的な方法
ここでは先ほど紹介した在庫削減の具体的な方法について詳しく解説します。それぞれがどういったもので、どのような特徴を持ち、どうやって進めていくのか、ぜひチェックしてみてください。
3S/5Sに取り組む
5Sとは、整理・整頓・清掃・清潔・しつけの5つの言葉の頭文字を取ったものです。これは、在庫管理に必要な場所を整理整頓し、常にきれいな状態を保つことで、在庫管理しやすい環境をつくるために実施します。それぞれの要素の概要は以下のとおりです。
- 整理：いらないものといるものを区別していらないものを処分する
- 整頓：いるものを使いやすい場所に置く
- 清掃：管理場所を掃除する
- 清潔：整理・整頓・清掃を徹底し、常にきれいな状態を保つようにする
- しつけ：これまでの4つのSを社内のルールとして定着させ、習慣化する
5Sの中でも、特に整理・整頓・清掃の3つに重点を置いて取り組む「3S」という考え方もあります。
需要を予測する
需要予測を正確にできるかどうかは、在庫管理、在庫削減において重要な要素の1つです。また、需要予測の精度を高めることが重要です。
具体的には、過去の販売データや市場の動向、流行、季節による変動、景気の状況などを踏まえた上でどのくらいの販売量が予測されるかを導き出します。近年ではAIや機械学習を活用した予測も行われており、精度向上に貢献してくれています。
商品の種類を減らす
在庫削減を進める上では、倉庫内で管理している商品の種類を減らすことも重要なポイントです。
商品の数が多い場合、それぞれの商品でどのくらいの数が適正なのかを予測し、それぞれの商品に応じた管理方法を実施しなければなりません。そのため、その分コストもかさみます。一方で、売れ行きが芳しくない商品や流行が終わりかけている商品などは、取り扱いをやめることで在庫数そのものを減らせるだけでなく、管理の手間も軽減できます。
また、商品の種類を減らす場合、部品の共通化や原材料で保管するといった方法も効果的です。例えば、長さ別の商品を取り扱っている場合、管理段階では長さ別に分けず、定尺で保管し、必要に応じてカットするといった形にすることで管理段階における商品の種類を減らせます。
リードタイムを減らす
リードタイムの短縮も在庫削減における方法の1つです。先ほども説明したように、リードタイムとは発注から実際に入庫されるまでの日数のことです。リードタイムを短縮できれば、在庫を圧縮し、削減することが可能です。
例えば、長さごとに異なる商品を扱っている場合、管理の段階では長さ別に分けず、定尺で保管し、必要に応じてカットする方法に切り替えることで、管理時の商品の種類を減らすことができます。
保管方法の見直し
現在の保管方法を見直すことが在庫削減や在庫管理の効率化につながる可能性もあります。例えば、在庫の保管場所がバラバラであれば、商品別、サイズ別、使用頻度別に整理し直すだけでどこに何があるのか把握しやすくなり、在庫管理が行いやすいです。
また、在庫の定位置を決めておけば、在庫の把握もしやすくなります。さらに、整理整頓をおこなうことで、在庫の見落としによる過剰発注の回避も可能です。整理整頓の過程で不要な在庫が見つかる可能性もあるため、それを廃棄することで在庫削減につながるケースもあります。
適正在庫の把握を目的として、在庫にバーコードを貼って、スキャナーで読み取れるようにすることも効果的です。スキャナーを活用できれば、リアルタイムでの在庫把握が可能となるため、在庫管理にかかる手間が省け、適正在庫を維持しやすいです。
在庫管理システムを導入する
適正な在庫を把握し、常にその状態を維持するためには、在庫管理システムの導入がおすすめです。
在庫管理システムとは、その名のとおり、在庫に関する各種情報を一元管理するシステムのことです。どこにどの商品がどのくらいあるのか、いつから保管しているのか、賞味期限・消費期限はいつなのかといった情報がシステム上に集約されるため、担当者はシステムを確認するだけで、在庫が過剰なのか不足しているのか、適正在庫が維持できているのかといった点をすぐに把握できます。
システムの導入は、在庫管理に関わる業務負担の軽減や効率化にも貢献するため、生産性の向上にもつながります。
在庫管理システムを導入するメリット
ここでは在庫管理システムを導入することでどういったメリットがあるのか解説します。在庫削減に取り組みたい方、在庫管理に課題を抱えている方などは、ぜひ参考にしてください。
リアルタイムで在庫状況を把握できる
先ほども述べたように、在庫管理システムの導入によって在庫状況をリアルタイムで把握できるようになります。在庫数や保管場所などの情報が常に最新の状態でシステム上に反映されているため、在庫の過剰や不足といったリスクを回避し、適正在庫の維持や適切なタイミングでの発注が可能となります。
在庫管理を効率化できる
在庫管理の効率化も、在庫管理システムを導入する大きなメリットの一つです。人手による手作業で在庫の確認や管理をおこなう場合、どうしても作業に時間がかかる上、ヒューマンエラーが発生することもあります。一方、システムを導入すれば人手による作業を最小限に抑えられ、一部の業務は自動化されるため、管理業務の効率化が期待できます。作業時間が短縮されることで、他の業務に注力することも可能です。
在庫の回転率を高められる
在庫管理システムの導入は在庫の回転率向上にも貢献してくれます。在庫回転率とは、在庫が一定期間内でどのくらい消費されたかを示す指標のことです。
システムを導入すると、商品の発注状況や出庫状況を把握できるようになります。そのため、どの商品がよく売れているか、どの商品が売れ行き不振かといったデータも確認できます。
これらのデータを基に発注を調整すれば、回転率の低い商品の在庫を減らすなどの対策が可能です。結果として、回転率の高い商品を中心に取り扱うことで、在庫全体の回転率を向上させることができます。
在庫管理にかかるコストを減らせる
システムを導入することで、一部業務の負担が軽減されるため、在庫管理にかかるコスト削減につながります。例えば、従来は人手で行っていた在庫の確認を、バーコードとスキャナーを使って読み取り、情報をシステム上に集約することで、確認作業にかかる時間を大幅に短縮でき、結果的に人件費の削減につながります。
精度の高い需要予測ができる
在庫管理システムには販売データも集約されるため、それらの情報に市場トレンドなどを組み合わせることで、需要予測の精度を高めることが可能です。正確な需要予測は、適正な在庫管理や在庫削減にもつながります。
在庫管理システム導入時のポイント
ここでは在庫管理システムの導入にあたって押さえておくべきポイントを紹介します。どのような点を意識しながらシステムを導入するべきなのか、ぜひ参考にしてください。
自社に必要な機能がついているか
在庫管理システムと一口に言っても、その機能はさまざまです。自社に必要な機能が備わっているかどうかを事前に確認しておくことが重要です。
例えば、発注管理や在庫追跡、需要予測、在庫管理といった機能は、多くの企業にとって役立つものであり、欠かせない要素です。一方、企業の規模が小さい場合や管理する商品の数がそれほど多くない場合は、機能が多すぎると使わない機能が出てきてしまい、無駄なコストが発生する恐れもあります。
操作性は良いか
どれほど多機能で優れたシステムであっても、操作性が悪ければ業務効率が下がってしまうため、使いやすさは必ず確認しましょう。特に、実際に現場で在庫管理をおこなうスタッフにとって使いやすいかどうかが重要なポイントとなります。作業中でも簡単に確認でき、初めて使う人でも直感的に操作できるシステムであれば、現場でも活用しやすいでしょう。
コストは適切か
在庫管理システムは、導入コストや月々の利用料金などがかかるため、コストパフォーマンスが適切かどうかを確認する必要があります。機能が多いほどコストも高くなる傾向がありますが、実際に使う機能が限られている場合は、費用負担だけが増えてしまいます。そのため、予算が限られている場合は特にコストに見合った機能であるかどうかを確認してください。
サポート体制の有無
システム導入後のサポート体制が整っているかどうかも、事前に確認しておくべきポイントです。初めてシステムを導入する場合、現場スタッフが操作方法を十分に理解できず、従来の業務に支障が出てしまうなど、導入がスムーズに進まない可能性があります。そのようなときにサポートが受けられるシステムであれば、初めての導入でも安心です。
在庫削減に取り組む際の注意点
在庫削減に取り組む際は、在庫を減らすこと自体が目的とならないよう注意が必要です。
在庫削減は、あくまで適正な在庫を維持し、企業の利益向上やキャッシュフローの悪化を防ぐためにおこなうものです。在庫を減らすこと自体が目的になってしまうと、本来必要な在庫まで処分してしまい、在庫不足に陥る恐れがあります。在庫削減が必要となるタイミングや、どの程度削減すべきか、削減による影響などを十分に考慮した上で取り組むことが重要です。
ポイントを理解して在庫削減を推進しよう
今回は、在庫削減の概要や取り組むべき理由、手順、具体的な方法などについて解説しました。在庫を過剰に抱えている状態は、企業にとってキャッシュフローの悪化を招く恐れがあるため、適正在庫を維持できるよう、必要に応じて在庫削減に取り組まなければなりません。在庫削減の方法は5Sの徹底や正確な需要予測などのほか、在庫管理システムをはじめとしたIoTツールの導入もおすすめです。
現場帳票システム「i-Reporter」では、現場の在庫管理業務などを簡単にデジタル化および効率化できます。
例えば、紙の帳票による作業は煩雑になりがちですが、i-Reporterを活用すれば、各種記録や転記作業をデジタルで行えるようになるため、在庫管理の効率化が可能です。ツール・システムの導入を通した在庫管理に興味のある方は、ぜひ導入を検討してみてください。
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