PLCが製造業にもたらす効果とは?仕組みやメリットを徹底解説

エレベータやお店の自動ドアなど、さまざまな場所でPLCを用いた制御システムが使用されています。PLCは外部システムとも容易に連携ができ、作業現場に合わせたシステムの構築が可能なため、製造現場への導入が推奨されています。

そこで今回は、PLCの仕組みや製造現場に導入することでどのようなメリットがあるのかを詳しく紹介していきましょう。

PLCについて

PLCはエレベータやお店の自動ドアなど、私たちの身近な場所の設備に使用されている制御装置です。ほかにも、工場や製造ラインなどの制御システムを実現するプログラムとしても使用されます。

PLCの役割や機能について詳しく説明します。

PLCとは

PLCとは「Programmable Logic Controller(プログラマブルロジックコントローラ)」の略称で、三菱電機の商品名である「シーケンサ」とも呼ばれています。ベルトコンベアの開始・停止や、部品の組み立てから梱包までの一連の作業をおこなうなど、製造業における設備や機器をコントロールするための制御装置です。

PLCはCPU、メモリ、モジュール、電源、通信インタフェースなどで構成されているので、プログラミングによって外部システムとも容易に連携が可能となり、製造業の自動化やプロセス制御などさまざまな分野で活用されています。

PLCの主な機能

PLCは多くのシステムに利用されており、以下のような機能を保持しています。

〇入出力の処理

入出力の処理には、デジタル入出力とアナログ入出力の二つに分けられます。

・デジタル入出力

デジタル入出力は、外部デバイスのオンとオフの切り替えの信号を使用してやり取りをおこなう機能です。デジタル入力は、スイッチやボタンなどのオンとオフの信号を受信し、PLCにそのままの情報を伝達します。例えば、センサーが物体を検出したかどうか、ボタンやスイッチが押されているのかいないのかを判断するために使用されます。

デジタル出力ではPLCからモーターやリレー回路にオンとオフの信号を送るため、機械の動作開始や停止、ランプの点灯や消灯などの制御が可能です。

デジタル入出力は、単純で素早い制御が求められる際に重要な機能と言えるでしょう。

・アナログ入出力

アナログ入出力は、連続的な値を持つ信号とのやり取りをおこなう機能です。アナログ入力は温度・圧力・重量・光センサーなどの連続する信号を受信し、PLCにその情報を伝達します。これにより、温度や圧力などの変化の記録・制御が可能です。

アナログ出力では、PLCからモーターやシリンダーなどに連続的な信号を送ります。例えば、オーディオデバイスで音量や周波数の調整をおこなったり、モーター回転速度の調整をおこなったりする際の制御が可能です。

〇プログラム制御

プログラム制御は主に、シーケンス制御とループ制御の二つがあります。

・シーケンス制御

英語では「sequence」と表記され、連続・順序・配列などを意味します。シーケンス制御とはその意味合いの通り、特定の順序で一連の操作やイベントが実行され、前のステップの完了をトリガーにし、次のステップの動作が開始される仕組みです。これにより、各工程の動作を確実に実行し、組み立てラインや加工工程の誤作動を防止できます。また、PLCを使用することで、シーケンス制御のプログラムを柔軟に作成・変更でき効率的なプロセスの自動化が可能です。

・ループ制御

ループ制御は、温度・圧力・重量などのプロセス変数を一定の値に保つための制御方式です。主なものとしてPID制御があり、連続的に測定されたプロセス変数を基に制御出力を調整します。例えば温度制御では、温度センサーからの信号を読み取り、ヒーターの出力を調整して設定温度を維持します。ループ制御は、プロセスの安定性と精度の向上に重要です。

製造業におけるPLCの役割とその重要性

製造業におけるPLCの役割は、組み立てラインの自動化・プロセス制御・品質管理・設備の監視など幅広いです。それぞれの箇所に適したシステムを導入しPLCと連携させることで、生産作業を一貫しておこなうことが可能になり、ヒューマンエラーの減少につながります。また、作業が一貫されることで製品の品質が保たれ不良品が市場に出回るリスクの低減が可能です。

PLCは製造業において、生産性と品質の向上、コスト削減を実現するための重要なツールとなっています。

PLCの仕組み

PLCにはさまざまな機能があり、製品の品質や作業効率向上のために幅広く利用されています。そこで、機能同士を連携させる仕組みについて説明します。

PLCの主な仕組みについて

PLCは一般的なコンピュータと同じように、CPU、メモリ、入出力モジュール、電源ユニット、通信インタフェースで構成されています。

〇CPU

CPUはPLCの頭脳として、プログラムの実行やシステム全体の制御をおこないます。メモリに保存されている制御プログラムを基に、各種入出力信号の処理をおこないます。

〇メモリ

各種システムの制御データの保管に使用されます。CPUと連携しており、実行プログラムのファイルや制御プログラムの管理をおこなっています。

〇入出力モジュール

スイッチやセンサーからのオンとオフの信号を受信し、温度や圧力などの連続的な信号を取得します。入力されたデータを基に、CPUがプログラムを実行しシリンダーやモーターなどの制御をおこないます。

〇電源ユニット

PLC全体の電源の供給をおこないます。

〇通信インタフェース

他のPLCやシステムと連携し通信をおこないます。データ共有や交換をおこなうことで、効率的な生産ラインの構築が可能です。

PLCに使用されるプログラミング言語の種類

国際電気標準会議(IEC)が「IEC 61131-3」を策定し、PLCのプログラミング言語の世界標準化が進みました。そこで定義されたプログラムである「ラダーダイアグラム(LD)」「ファンクションブロックダイアグラム(FBD)」「シーケンシャルファンクションチャート(SFC)」「インストラクションリスト(IL)」「ストラクチャードテキスト(ST)」の5つの言語の特徴を紹介します。

〇ラダーダイアグラム(LD)

LDのリレー回路の見た目がはしごに似ていることから、ラダー図またはラダープログラムとも呼ばれています。図の左側には入力や条件を記載し、右側には出力や動作内容を記載する決まりです。記載された条件は上から順番に実行され、スイッチのオンとオフの状態やセンサーの検出を基に、モーターやシリンダー制御がおこなわれます。

LDはプログラムの内容の表現がしやすく、制御システムのロジックを視覚的に理解できる点が特徴です。

〇ファンクションブロックダイアグラム(FBD)

FBDはブロックを用いて、機械的なプロセスを表現した図を指します。ブロックには数学的な演算やタイマーなどが含まれており、それらを組み合わせてデータの流れや制御の順序を明確に記します。プログラムの構造や処理の流れが視覚的にわかりやすく、直感的な理解が可能です。

FBDは、ソフトウェアエンジニアや制御エンジニアのプログラム開発と設計に用いられています

〇シーケンシャルファンクションチャート(SFC)

SFCは図形的シンボルを用いて工程の流れに沿っているプログラムを指します。さまざまな段階でプロセスを表現し、段階ごとに特定の条件に基づいた順序制御が実行されます。特に、連続するプロセスの制御や、時系列に依存する処理の管理に向いている点が特徴です。

〇インストラクションリスト(IL)

ILは一つの命令で一つの処理をおこなう命令のリストとして表現され、各命令はコンピュータに直接理解される形式で記述されます。大変シンプルな構文のため、初学者でも理解しやすく基本的な制御タスクや数学的処理を効率的に実行できる点が特徴です。

〇ストラクチャードテキスト(ST)

STはPLC用の高級プログラミング言語の一つで、複雑なアルゴリズムやデータ処理に適しています。特に論理的な処理やアルゴリズムの実装が必要な場合に使用され、変数の宣言や条件分岐などの制御構造を作成するなど、複雑なロジックや計算にも対応できる柔軟性が特徴です。

それぞれのプログラミング言語は他の言語と併用可能なため、実行したいプログラムに合わせて最適なプロセスを作成ができます。

PLCを導入するメリット

製造業がPLCの導入により得られるメリットを紹介します。

制御盤の省スペース化が可能

従来のリレー回路を使用した制御盤と比較し物理的な配線が少なく、プログラムの変更をおこなうだけで制御盤の設置が簡単にできます。PLCはシステムの変更や追加があった際に、新しい配線の導入をおこなう手間が省けるとともに、制御盤が非常にコンパクトサイズなため設置スペースの節約が可能です。

柔軟なプログラムで複雑な制御が可能になる

リレー回路では、固定されたハードウェアに配線を付け足すなどの物理的な作業が必要です。しかしPLCはソフトウェアプログラムで管理されているため、簡単に動作の変更やアップデートができます

生産効率の向上

PLCを導入することで、システムの変更や拡張に伴う物理的な作業がなくなり、プログラムの修正やアップデートの自動化が可能です。これにより、一時的に生産ラインをストップさせる必要性がなくなり、決められた時間にシステムメンテナンスをおこなえるようになるため、生産性を維持したままデータの修正やメンテナンスがおこなえます。

PLCのデメリット

PLCは多くのメリットがある一方で、デメリットも存在しています。主なデメリットについても紹介します。

初期費用が高い

PLCを導入するにあたり、ハードウェアやソフトウェアの設置に初期コストがかかります。

特に、小規模な生産現場やプロジェクトでは、リレー回路や他の制御システムの導入に比べて高額になる可能性があります。

PLCの扱いに高度な専門知識が必要

PLCのプログラム設計や動作変更をおこなう際には、ラダーダイアグラムやストラクチャードテキストなど、特定のプログラミング言語の知識が必要です。そのため、PLC設定変更の仕組みを習得できるように、技術者のトレーニングや教育環境を整える必要があります。

また、いくつものプログラムを組み合わせるとプログラムの内容が非常に複雑になるため、エラーのリスクにつながります。

製造業におけるPLCの活用方法

PLCは製造業において、多岐にわたって活用されています。ここでは、主な活用方法を紹介します。

生産ラインの自動化

生産ラインにおいてロボットや機械の動作を制御し、製品の組み立てから梱包までの流れをPLCによって各機器に動作を記憶させることで、生産ラインを自動化できます。これにより生産効率が向上し、安定した品質が保てます。

品質管理の向上

PLCは部品検知や位置検知をリアルタイムにおこない、データを収集しています。温度や圧力などのプロセス変数を監視し、異常や不良を検知した際は次のステップでどのような作業をおこなうかを判定するのです。包装作業の自動化や品質検査を実施することで、製品の品質向上につながります。

予防保全とメンテナンスの最適化

PLCは予防保全の日程調整にも使用されます。機械の動作データを監視し、故障や障害の早期発見をすることで、計画的なメンテナンスが実施できます。これにより、予期せぬダウンタイムを抑制し、安定した生産が可能です。

PLCの種類と選び方

PLCにはいくつかの種類があり、それぞれの現場のニーズに応じてさまざまな要素を考慮する必要があります。PLCの種類や選定基準についてまとめます。

コンパクト型とモジュラー型

PLCは主に、コンパクト型とモジュラー型に分類されます。それぞれの特徴について、解説していきます。

〇コンパクト型

コンパクト型PLCとは、CPU、電源ユニット、入出力モジュールが一体化されているPLCです。そのため、限られたスペースでの利用や小規模な制御システムを利用する際に多く用いられます。初期導入コストも比較的低いので、自動化システムを手軽に導入するのに適しています。

〇モジュラー型

モジュラー型PLCは、CPU、電源ユニット、入出力モジュールが独立しているため追加や変更などの拡張性に優れている点が特徴です。モジュールを自由に組み合わせて配置できるため、大規模な制御システムを利用する際に用いられます。複雑なプロセスや多数の入出力モジュールを持つシステムと連携ができるように設計されているため、システムの柔軟性を高めることが可能です。

目的別の選定基準

システムの規模や求める性能により、PLCを選定します。

例えば自動車の製造ラインのように、部品の組み立てから出荷までを一貫しておこなう場合には、さまざまなシステム間での連携や複雑な処理が必要です。その場合、コンパクト型PLCよりもモジュールを自由に組み合わせられるモジュラー型PLCの使用が推奨されます。プロジェクトのニーズに適したPLCを選ぶことで、効率的な自動化システムの構築が可能です。

PLCの将来性

製造業の現場では人手不足が深刻化しています。その穴埋めをするべく、ほとんどの製造現場で自動化が進んでいます。今後はさらに製造の効率化が求められるでしょう。

遠隔監視システムやIoTとPLCを連携させることで遠隔での操作が可能になり、現場での負担軽減が期待できます。

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