OPRPとは、食品加工現場の衛生管理状況を確認し、リスク要因から現場を守るために実施する活動です。OPRPに取り組むことで、衛生管理体制の強化だけでなく、製品の品質確保や経済的損失の回避など、さまざまなメリットが得られます。
この記事では、OPRPの概要や具体的な方法、進め方の手順などについて解説します。食品を扱う現場で働いていて、衛生管理体制の見直しを検討している方は、ぜひ参考になさってください。
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目次
OPRPとは

OPRPとは、食品加工現場における衛生状況を確認し、製造現場を細菌や有害物質などの危害要因(ハザード)から守るための活動です。OPRPは、Operation Prerequisite Programの頭文字を取った略称で、日本語では「重要な一般衛生管理」や「オペレーションPRP」と呼ばれることもあります。
なお、OPRPは、ISO22000(食品安全マネジメントシステムに関する国際規格)や、それに追加して求められるFSSC 22000を構成する要素の一つです。ISO22000は、食品に関わるすべての組織が食品を安全に提供するための国際的なルールであり、生産から消費までの各工程に携わる企業や組織が、衛生管理をマネジメントするために活用しています。
具体的には、以下の3つに分類されます。
- PRP(Prerequisite Program):フードチェーンにおける衛生環境を維持するための基本条件や活動
- OPRP(Operation Prerequisite Program):リスク要因から衛生環境を守るために実施する活動
- CCP(Critical Control Point):食品にリスク要因の影響が及ばないように管理するための活動
製造から販売まで、食品に関わる作業をおこなうすべての組織にとって、重要な役割を果たすのがOPRPです。
OPRPが必要な背景
食品に関わる企業にとって衛生管理が重要であることは言うまでもありませんが、近年は衛生管理に対するニーズの高まりに加え、現場でのリスク要因が複雑化し、多層的なリスク管理が必要となったことで、OPRPが求められるようになりました。
もともとは、先ほど紹介したCCPを活用し、食品や製品に対するリスク要因を防止・除去、または最低限許容できるレベルまで減少させるよう取り組んでいました。
しかし、リスク要因の複雑化により、CCPだけでは対応しきれなくなったため、そうしたリスクを効果的に管理するための新たな手段が求められるようになり、OPRPが導入されました。
簡単に言えば、CCPは重大なリスク要因に対処するために厳格なルールのもとで運用され、OPRPは、CCPほど重大ではないリスク要因に対処するために用いられるものと考えてください。いずれも食品の安全管理において欠かせない存在である点は共通しています。
OPRPとPRPの違い
OPRPと混同しやすい言葉にPRPがありますが、両者は異なります。もう少し詳しく言うと、どちらもリスク要因を減らし、防止する点では共通していますが、モニタリングをおこなうかどうかという点で違いがあります。モニタリングとは、科学的な管理手段を用いてチェックをおこなうことです。
例えば、PRPでは「製造ラインを毎日清掃しているので大丈夫です」といったように、科学的な根拠がなくてもルールに沿った行動をしていれば問題ありません。一方、OPRPでは「製造ラインの清掃を毎日行い、細菌の数が500以下となっているため大丈夫です」といったように、なぜ大丈夫なのか科学的な根拠を明示する必要があります。
PRPは明確な基準や規定がないルールであるのに対し、OPRPは明確な管理基準があるといった点で異なるものだと理解してください。
OPRPとCCPの違い
CCPもPRPと同様に、基本的には食品に関する作業環境からリスク要因を取り除く、または低減させることを目的としています。
具体的には、CCPはリスク要因を完全に除去するか、許容範囲まで低減させるためにさまざまな取り組みを行い、OPRPはCCPの前後の作業段階で厳格な衛生管理をおこないます。
OPRPが衛生管理のための最後の砦とされているのに対し、CCPは「とどめの一撃」として位置づけられている点が特徴です。「とどめの一撃」を効果的なものにするためにも、OPRPによる厳格な衛生管理が求められます。
OPRPに取り組むメリット

ここでは、OPRPに取り組むことで得られるメリットについて解説します。メリットを理解した上で、ぜひOPRPに取り組んでみてください。
リスク管理の強化
OPRPに取り組むメリットの1つが、リスク管理体制を強化でき、食品の安全性を高められる点です。OPRPは、CCPほどの厳格なルールのもとでの管理は必要はありませんが、それでもリスク要因に対してモニタリングを行った上で対策をおこなうため、潜在リスクの早期発見、効果的な対策及び低減が可能です。それによってリスク管理体制が強化され、より安全な作業環境が実現します。
製品品質の担保
OPRPは、製品品質の担保にも貢献します。これは、製造過程でモニタリングや検証をおこなうためです。科学的に明確な基準に基づいて製造環境を管理することで、一定以上の品質の製品を作ることができます。
法律の遵守
OPRPの導入が法律の遵守につながるケースもあります。これは、国や地域によっては食品安全管理のためにOPRPの導入が必要とされている場合があるためです。例えば、日本やアメリカ、カナダ、イギリスなどの国ではHACCP(食品の安全を確保するための衛生管理手法)が義務化されています。
このHACCPにおいてリスク要因を管理するための対策として設定されるOPRPの適切な運用は、食品製造に関わる企業にとって事業活動上重要であるのはもちろん、法令遵守にもつながります。
CCPの負担軽減
OPRPに取り組むことでCCPの負担を軽減できる点も、メリットの一つです。CCPは衛生管理における「とどめの一撃」として厳格な管理が求められますが、CCPの前後の作業段階でOPRPによる厳格な衛生管理をおこなうことで、CCPで管理しなければならない場面を減らすことができます。
経済損失の回避
OPRPに取り組むことは、企業の経済的な損失回避にもつながります。例えば、衛生管理が不十分で安全でない製品が市場に出回ると、製品のリコールや食品安全問題が発生し、企業の社会的信頼や売上の低下など、大きな損失を被る恐れがあります。
一方で、日頃からOPRPに取り組み、安全な製造環境を維持できていれば、そういったトラブルが発生する可能性は低いため、さまざまな損失を回避できます。
OPRPに取り組む際の注意点

ここでは、OPRPに取り組む際に注意すべき点を紹介します。OPRPには先述のような多くのメリットがありますが、注意を怠るとそのメリットを十分に享受できなくなる恐れがあります。どのような注意点があるのか、ぜひ参考にしてください。
社員への影響を考慮する
OPRPに取り組む際は、社員への影響を考慮する必要があります。OPRPの導入によって業務内容が変更・増加する可能性があるためです。慣れ親しんだ業務が変わることでストレスや疲労が増すだけでなく、業務効率が低下する場合もあるため、従業員への負担が大きくなりすぎないよう配慮することが大切です。
例えば、事前にOPRPの導入によって何がどう変わるのかを周知徹底する、具体的な手順を理解してもらうためのトレーニング期間を設けるといったことが考えられます。また、導入直後はトラブルが発生するケースも想定し、問い合わせ先を社内に設定しておくなど、スムーズに対策できるようにしておくことも大切です。
定期的に見直す
OPRPは一度導入して終わりではなく、定期的に見直しながら継続的に改善していくものです。例えば、内部監査や外部監査の結果を踏まえてOPRPの有効性を振り返り、必要に応じて調整や変更を行います。
取り組みを記録に残しておく
OPRPに取り組む場合は、その取り組みを文書化するなどして記録に残しておくことも大切です。記録に残しておくことで、後から実施状況をチェックできるほか、振り返りをおこなう際などにも活用できます。また、監査の際に衛生管理への取り組みとしてOPRPの記録を提示するといったことも可能です。
OPRPの具体的な取り組み

ここでは、OPRPにおける具体的な取り組みを紹介します。実際にOPRPに取り組みたいが、何をすれば良いのかわからない、どのようなことができるのか知りたいという方は、ぜひ参考にしてください。
7S
OPRPにおける取り組みの1つが7Sです。7Sとは、整理(Seiri)、整頓(Seiton)、清掃(Seisou)、洗浄(Senjou)、殺菌(Sakkin)、しつけ(Shitsuke)、清潔(Seiketsu)の頭文字がSから始まる7つの活動のことです。一般的には、整理、整頓、清掃、清潔、しつけの5つから構成される5Sに取り組むケースが多いですが、OPRPは洗浄と殺菌が加わり7つから構成されています。
この7つの活動を通して作業環境を衛生的に保つことが大きな目的です。
それぞれの活動の概要は以下のとおりです。
整理(Seiri) | ・製造現場における必要なものと不要なものを区別する→例:製造ライン周辺にある不要な道具を片付ける、あまり使わない道具を倉庫に片付けるなど・定期的な整理を通して清潔な環境を保つことが目的・いらないものの処分によって衛生管理をしやすい環境が整う |
整頓(Seiton) | ・必要なものと不要なものを整理した上で、整理されたものを使いやすいように配置する→例:材料を整然と並べて取り出しやすくする、道具を透明な容器に入れて何が入っているのかわかりやすくするなど・適切な場所への配置はスムーズな作業を可能にし、衛生管理も行き届きやすい・物が散らばっていない整頓された状況は現場における事故や怪我のリスクも低減してくれる |
清掃(Seisou) | ・現場の汚れやゴミを取り除く→例:作業後に作業台を拭く、床に溜まったゴミや食材の屑を除去する、機会を掃除して汚れがたまらないようにするなど・定期的な清掃を通して衛生状態を維持する・綺麗な環境は害虫害獣も発生しにくいため異物混入リスクも抑えられる |
洗浄(Senjou) | ・機械や器具、設備などに付いた汚れや残留物を取り除く→例:生産ラインの洗浄、作業前の手洗い、冷蔵庫内の清掃など・洗浄は細菌やウイルスの繁殖抑制につながるため、食中毒や感染症などのリスク低減が期待できる・定期的な洗浄は設備の寿命を延ばすことにも貢献する |
殺菌(Sakkin) | ・製造過程で使用する道具や設備への除菌・消毒をおこなう→例:器具の洗浄後に熱湯を使って細菌を取り除く、冷蔵庫内を消毒剤を使って殺菌するなど・洗浄だけでは取り除けないものもあるため、殺菌を通してより衛生管理を徹底する |
しつけ(Shitsuke) | ・整理、整頓、清掃、洗浄、殺菌を習慣づけること→例:習慣づけのために社員に対する教育を行い、衛生管理に対する意識を高める、誰でも同じような取り組みができるよう、作業内容の標準化を図るなど |
清潔(Seiketsu) | ・ここまでの6つのSに継続して取り組むことで清潔な状態が維持されていること |
7Sは、現場を一時的にきれいにし掃除をするだけでは不十分です。継続的に取り組み、常にきれいな状態を保てるようにする必要があります。
温度管理
OPRPにおける具体的な取り組みの一つに、温度管理があります。例えば、製品製造の過程で加熱工程がある場合、加熱後に冷却をおこなうケースも多く、その際の温度管理を誤ると、冷却するまでの間に菌が増殖する恐れがあります。そのような事態を避けるためにも、OPRPでは温度管理を徹底します。温度管理の方法の例は以下のとおりです。
- 計測器で測定する
- 加熱・冷却システムの出力を調整する
- 加熱・冷却システムの異常の有無を確認する
また、計測器が正確であるかどうかも非常に重要であるため、誤差がないように定期的な点検および校正をおこなうようにしてください。
OPRPの進め方

ここでは、OPRPを実際に進める際の具体的な手順を紹介します。これから初めてOPRPに取り組もうとしている方、OPRPの経験が浅く流れがいまいち理解できていない方などはぜひ参考にしてください。
OPRPを識別する
OPRPに取り組む場合、まずは製造工程全体を見直し、何が潜在的なリスク要因であるかを明確にする必要があります。リスクの発生頻度や影響の大きさなどを踏まえ、リスクを抑えるために管理を行わなければならないことをOPRPとして設定してください。
管理基準を確立する
OPRPを設定したら、それに対する管理基準を確立してください。管理基準とは、OPRPが正しく機能していることを確認するための基準です。例えば、先ほど紹介した7Sにおける殺菌や温度管理であれば、「120℃以上で80分間以上加熱殺菌をする」「2時間以内に10℃以下まで冷却する」といったことが管理基準として挙げられます。なお、基準は科学的なデータや専門家の知見に基づいたものでなければなりません。
実施と記録をする
管理基準が設定されたら、実際に取り組みを実施し、実施内容を記録してください。記録を残しておくことで、管理基準が守られているかどうかを確認できるためです。また、記録は後から実施内容を振り返り、改善策を検討する際にも活用できるほか、監査の際の証拠としても活用可能です。
検証と改善をする
取り組みを実施した結果、OPRPの管理基準が満たされていれば問題ありませんが、満たされていない場合は、その原因を検証し、改善策を講じる必要があります。例えば、製造現場での清掃が不十分で管理基準に達していない場合は、清掃頻度の見直しや従業員への周知徹底などを改善策として検討します。衛生管理を徹底するためにも、検証と改善による継続的な見直しが不可欠です。
OPRPに取り組んで衛生管理への意識を高めよう
今回はOPRPの概要や取り組むメリット、具体的な取り組みや進め方などについて解説しました。OPRPは、食品加工現場における衛生状況を確認し、リスク要因から守るための活動のことです。
OPRPに取り組むことで、リスク管理体制を強化できるほか、製品品質を担保でき、経済損失の回避にもつながります。実際にOPRPに取り組む際は、まずリスク要因を明確にした上で管理基準を設定し、実施と記録、検証と改善を繰り返していきます。今回の内容を参考に、OPRPに取り組んでみてください。
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