製造業の品質管理において、測定システムの信頼性は非常に重要です。信頼性を損なうと、製品やプロセスのデータ測定を正しくおこなえない恐れがあります。そのため、MSA(Measurement System Analysis)と呼ばれる測定システム分析を活用して、信頼性と精度の向上が欠かせません。
本記事では、MSAの基本的な考え方から、具体的な分析手法、そして導入のメリットまでをわかりやすく解説いたします。
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目次
MSA(測定システム解析)とは

MSAとは、製品の品質を判断するために使う測定器具や測定システムが、どの程度信頼できるのかを統計的な手法で評価・分析する方法です。「Measurement System Analysis」の略語で、日本語では「測定システム解析」と訳されます。
製造業において正しい測定ができなければ、良い製品を不良品として、また不良品を良品として出荷してしまう可能性があります。そのため、MSAは高品質なものづくりを実現するための土台となる重要なプロセスです。
また、MSAは、自動車産業向けの品質マネジメントシステムに関する国際規格・IATF16949のコアツールの一つとして位置づけられています。コアツールとは、IATF16949が要求する品質マネジメントシステムを効果的に運用するために、特に重要とされるツール群です。
つまり、MSAは測定器具や測定システムの質を評価し、改善するための重要な手法となります。測定システムの変動によって製品の品質評価への影響を最小限に抑えるために、MSAは不可欠な存在です。
MSAの目的と重要性
MSAの最大の目的は、測定データから「測定によるばらつき」と「製品そのもののばらつき」を切り分けて評価することです。これにより、測定データの信頼性を保証し、データに基づいた客観的で合理的な意思決定を可能にします。
信頼性の高いデータを得ることで、以下のような重要な役割を果たします。
- 品質の安定化:正確なデータに基づいた工程管理で、製品品質の安定化
- 不良品の削減:誤った判定による不良品の発生防止で、無駄なコストを削減
- 問題の真因追及:品質問題が発生時、製品の問題なのか、測定方法の問題なのかを正確に切り分け、根本原因を解決
- 顧客からの信頼獲得:IATF16949などの国際規格でも要求されるMSAの適切な実施は顧客からの信頼に直結
製造業におけるMSAの役割

製造業において、MSAは単なるデータ分析手法にとどまらず、品質管理体制の根幹を支える重要な役割を担っています。MSAの役割は、主に「品質保証」「コスト削減」「顧客信頼の獲得」の3つです。
まず、MSAは客観的なデータに基づいて製品の品質を保証するための基盤です。測定システムの信頼性が担保されて初めて、データを用いた出荷可否の判断や、工程能力の評価が可能となります。
次に、測定の誤りをなくすことで、不良品の流出や不要な手直し(リワーク)を防ぎ、直接的なコスト削減に貢献します。最後に、国際的な品質マネジメント規格であるIATF16949などでも要求されるMSAの適切な実施で、顧客に対して高い品質管理レベルを証明し、取引を有利に進めるためのポイントとなります。
校正や他の品質手法との違い

MSAは品質管理で使われる「校正」や「SPC」「FMEA」といった他の手法と混同されがちです。MSAの役割をより明確にするために、違いを解説します。
校正との違い
「校正」と「MSA」は、どちらも測定の正しさを確認する手法ですが、目的と範囲が異なります。
項目 | 校正 (Calibration) | MSA (測定システム解析) |
目的 | 測定器が示す値と、より正確な基準(標準器)の値との関係性を確認・調整すること | 測定システム全体(測定器、人、方法、環境など)から生じるばらつきを定量的に評価すること |
焦点 | 測定器単体の正確さ(Accuracy) | 測定プロセス全体のばらつき(Variation)※繰り返し性や再現性などを含む |
評価対象 | 測定器そのもの | 測定器、測定者、測定手順、測定環境など、測定に関わるすべての要因 |
例 | 「この測定工具は、標準ブロックを測定したときに正しい値を示しているか?」を確認する | 「この測定工具を使って、AさんとBさんが同じ部品を測定したとき、結果はどのくらいばらつくか?」を分析する |
簡単に言えば、校正は測定器が「正しい方向を向いているか」を確認する作業で、MSAは測定プロセス全体が「常に安定して的を射られるか」を評価する手法です。校正は、良い測定システムであるための前提条件の一つと覚えておきましょう。
SPC・FMEAなどとの違い
SPC(統計的工程管理)やFMEA(故障モード影響解析)も品質管理における重要な手法ですが、MSAとは役割が異なります。
項目 | MSA | SPC | FMEA |
目的と役割 | 測定システムの信頼性を評価し、すべてのデータ分析の土台にする | 製造工程が安定しているかを統計的に監視し、工程の異常を検知する | 製品や工程に潜む潜在的なリスク(故障モード)を予測・評価し、事前に対策を講じる |
MSAとの関係 | SPCやFMEAで使うデータが信頼できるものであることを保証する | MSAで信頼性が確認された測定データを用いて、管理図などを作成する※測定システムのばらつきが大きいと、工程の異常を正しく検知できない | 測定システムの不具合もFMEAのリスク評価対象となりうる。MSAの結果は、測定に関するリスク評価のインプットとなる |
3つの関係は、料理に例えるとわかりやすいです。MSAは「計量カップや秤が正確かを確認する」こと、SPCは「いつも同じレシピで安定して作れているかを確認する」こと、FMEAは「食中毒などの失敗を未然に防ぐ方法を考える」ことにあたります。正確な計量(MSA)ができていなければ、安定した調理(SPC)もリスク管理(FMEA)も意味を成しません。
MSAの5つの分析対象と評価方法

MSAでは、測定システムのばらつきを複数の要素に分解して評価します。主要な評価項目は「偏り」「安定性」「直線性」「再現性」「繰り返し性」の5つです。5つの総合的な分析で、測定システムの全体像を把握します。
5つの評価項目の内容は以下の通りです。
分析対象 | 概要 | 評価する内容 | 主な評価方法 |
偏り (Bias) | 測定値の平均が、真の値からどれだけズレているか | 測定の正確さ | 基準サンプル測定、t検定、管理図 |
安定性 (Stability) | 時間が経過しても、測定システムが安定した結果を出し続けるか | 測定の時間的安定性 | 管理図(X-R管理図など) |
直線性 (Linearity) | 測定範囲全体で、偏りの大きさが一定であるか | 測定範囲による正確さの変化 | 回帰分析、グラフ評価 |
繰り返し性 (Repeatability) | 同じ人が同じ条件で繰り返し測定したときのばらつき | 測定器自体のばらつき(精度) | ゲージR&R分析(ANOVA法など) |
再現性 (Reproducibility) | 違う人が同じ条件で測定したときのばらつき | 測定者間のばらつき | ゲージR&R分析(ANOVA法など) |
偏り(Bias)
偏りとは、同じ部品を複数回測定したときの平均値が既知の正しい値(基準値や真の値)からどれだけ系統的にズレているかを示す指標で、測定システムの「正確さ(Accuracy)」を評価します。偏りが小さいほど、測定値は真の値に近いと判断されます。
評価方法
基準となる値がわかっているサンプル(標準サンプル)を何度も測定し、その測定値の平均と基準値との差を統計的に評価します。t検定※などを用いて、その差が偶然によるものか、意味のあるズレ(偏り)なのかを判断します。
例として、ある製品の長さを10回測定するケースを挙げてみましょう。
測定回数 | 測定値 (mm) |
1 | 9.4 |
2 | 9.6 |
3 | 9.5 |
4 | 9.3 |
5 | 9.7 |
6 | 9.4 |
7 | 9.5 |
8 | 9.6 |
9 | 9.4 |
10 | 9.6 |
平均 | 9.5 |
ある製品の長さを10回測定し、真の長さ(正しい長さ)が10.0mmであるとします。しかし、測定値の平均は9.5mmであり、真の長さから0.5mm低い値です。この0.5mmの差が偏り (バイアス) を表しています。つまり、測定システムや測定方法に、常に一定方向に誤差を生じさせる要因が存在すると表しています。
※t検定:2つのグループの平均値に統計的に有意な差があるかどうかを検証するための統計的検定手法
安定性(Stability)
安定性とは、同じ測定システムを使って、同じサンプルを一定期間にわたって測定し続けたときに測定結果が時間とともに変化しないか(安定しているか)を評価する指標です。ドリフトや摩耗など、時間経過による測定器の変化を捉えるために重要です。数値が安定しているほど、測定器の信頼性が高いと判断できます。
評価方法
定期的に同じサンプルを測定し、その結果を管理図(X-R管理図など)にして監視します。測定値が管理限界線内に収まり、特定の傾向が見られなければ、その測定システムは安定的であると判断されます。
例えば、ある製品の長さを5日間連続で、1日に5回ずつ測定するケースを挙げてみましょう。
測定日 | 測定回数 | 製品寸法 |
1日目 | 1回目 | 10.0 mm |
1日目 | 2回目 | 10.1 mm |
1日目 | 3回目 | 9.9 mm |
1日目 | 4回目 | 10.0 mm |
1日目 | 5回目 | 10.1 mm |
2日目 | 1回目 | 10.2 mm |
… | … | … |
5日目 | 5回目 | 9.8 mm |
安定性は、測定結果が時間経過と共に大きく変動せず、安定していることが重要です。もし、ある日は10mm前後で安定しているのに、別の日は12mm前後の値ばかりになるなど、測定結果に大きな変動が見られる場合、測定システムに問題がある可能性があります。
直線性(Linearity)
直線性とは、測定器の測定範囲(例:0 mmから100 mmまで)の全体にわたって、偏りの大きさが一貫しているかを評価する指標です。例えば、小さいものを測るときは正確でも、大きいものを測るとズレが大きくなる場合、「直線性が悪い」と評価されます。
評価方法
測定範囲を網羅するよう、値が異なる複数の基準サンプルを用意します。それぞれのサンプルを測定し、「基準値」と「測定値の偏り」の関係を線グラフ化します。点が直線状に並んでいれば直線性があり、大きく逸脱している場合は直線性に問題があると判断します。
測定範囲が0 mmから100 mmまでの測定機器におけるケースを挙げてみましょう。
基準値 (mm) | 測定値 (mm) | 偏差 (mm) |
0 | 0.2 | 0.2 |
25 | 25.3 | 0.3 |
50 | 50.1 | 0.1 |
75 | 74.8 | -0.2 |
100 | 99.9 | -0.1 |
例では、偏差は比較的小さく、全体的に測定機器は良好な直線性を維持しています。測定結果を線グラフ化したとき、理想的な直線からのずれが小さいほど、機器の精度が高いと判断されます。
繰り返し性(Repeatability)
繰り返し性とは、一人の測定者が同じ測定器を使い、同じ部品の同じ箇所を短時間に繰り返し測定したときの測定値のばらつきのことです。主に測定器自体が持つばらつき(精度)を示し、「EV(Equipment Variation)」とも呼ばれます。数値が高いほど測定器のばらつきが大きく、精度が低いと判断されます。
評価方法
一人の測定者によって5回測定するケースを挙げてみましょう。
測定回数 | 測定値 |
1 | 10.1 mm |
2 | 9.9 mm |
3 | 10.0 mm |
4 | 10.2 mm |
5 | 9.8 mm |
上記の例では、測定値の範囲は9.8mmから10.2mmであり、範囲は 0.4mmです。バラつきがある場合は、測定器の故障、測定方法の不適切さ、または測定者の技術不足などが原因です。
繰り返し性は、一般的にゲージR&R(Gauge Repeatability and Reproducibility)分析※1の中で評価されます。ANOVA(分散分析)法※2などの統計手法を用いて、測定データ全体のばらつきの中から、繰り返し性に起因するばらつきの大きさを定量的に算出します。
※1 ゲージR&R分析:測定システムの変動を評価し、全体のプロセス変動に与える影響を理解するための統計的な手法
※2 ANOVA(分散分析)法:3つ以上のグループ間の平均値の差を検定するために使用される統計的手法
再現性(Reproducibility)
再現性とは、異なる測定者が同じ測定器を使い、同じ部品の同じ箇所を測定した際に生じる測定値の平均値の差(ばらつき)を指します。主に測定者によるやり方の違いや読み取りのクセなど人によるばらつきを示しており、「AV(Appraiser Variation)」とも呼ばれます。
繰り返し性と再現性の違いは、「自分自身で同じ結果を出せるか」「他人が同じ結果を出せるか」です。
評価方法
繰り返し性と同様に、ゲージR&R分析の中で評価されます。ANOVA法を用いて、全体のばらつきの中から測定者間に起因するばらつきの大きさを定量的に算出します。
一人の測定者が同じ測定器を使って、同じ部品の同じ箇所を5回測定するケースを見ていきましょう。
測定回数 | 測定値 (例: mm) |
1 | 10.01 |
2 | 9.98 |
3 | 10.02 |
4 | 9.99 |
5 | 10.00 |
上記の例では、測定値が9.98mmから10.02mmの範囲でばらついています。ばらつきの度合いが再現性を示し、ばらつきが大きいと部品の合否判定が不安定になり、工程安定性の評価が難しくなります。
MSAの進め方

MSAを効果的に実施するためには、計画的にステップを踏むことが重要です。一般的に、MSAは「計画」「実施」「分析・評価」の3つのフェーズにわけられます。
ステップ | 主な活動内容 | 注意点 |
1. 測定システムの選定 | 評価対象とする測定システム(測定する特性、測定器、測定者など)を明確にする。 | 製品の重要度や工程のリスクを考慮して優先順位を決定する。 |
2. 計画の立案 | 評価項目(5つの分析対象のうちどれか)、サンプル数、測定者、測定回数などを決定し、具体的な実施計画書を作成する。 | 統計的に意味のある結果が得られるよう、適切なサンプルサイズや測定回数を設定する。 |
3. 測定の実施 | 計画書に基づき、実際の測定をおこなう。測定順序はランダム化し、測定者が他の測定者の値を見られないように配慮する。 | 測定は通常の作業環境でおこなう。特別な環境では、日常のばらつきを評価できない。 |
4. 分析と評価 | 収集したデータを統計ソフトウェア(Minitabなど)で分析し、結果を解釈する。判定基準(例:%GRRが10%未満かなど)に基づいて合否を判断する。 | 分析結果から問題点を特定し、具体的な改善策につなげることが最も重要。 |
1.測定システムの選定
まず、どの測定プロセスを評価対象とするかを決定します。新製品の重要な品質特性を測定するシステムや、過去に品質問題の原因となった工程の測定システムなど、リスクや重要度に応じた優先順位付けが重要です。また、対象とする特性や使用する測定器、担当する測定者なども明確に定義します。
2.計画の立案
次に、具体的な実施計画を立てます。
- 評価項目:5つの分析対象のうち、どれを評価するのかを決める(特にゲージR&Rは中心的な評価項目)
- サンプル:測定対象となる部品(サンプル)を何個用意するかを決める(通常は10個程度)
- 測定者:何人で測定するかを決める(通常は2~3名)
- 測定回数:1つのサンプルを何回繰り返して測定するかを決める(通常は2~3回)
4つの内容を計画書にまとめ、関係者で合意します。
3.測定の実施
計画書に従って、実際にデータを取得します。測定者にはどのサンプルを測定しているかわからないようにする、測定順序をランダムにするなどの工夫が必要です。結果、無意識のバイアスがかかることを防ぎ、より正確なデータを収集できます。
4.分析と評価
収集したデータは統計ソフトウェアを用いて分析します。ゲージR&R分析の場合、測定システム全体のばらつきなどを算出し、事前に定めた判定基準(例:変動率が10%未満なら合格、30%以上なら不合格など)と比較して、測定システムが許容レベルにあるかを判断します。
結果が基準を満たさない場合は、原因を特定し、改善活動に移ります。
MSAを実施するタイミング

MSAは品質管理プロセスの一環として、適切なタイミングで定期的に、あるいは必要に応じて実施することが重要です。
- 新規測定システムの導入時:新しい測定器や測定方法が、要求される精度を満たしているかを確認する
- 測定方法や手順の変更時:変更が測定システムのばらつきに影響を与えていないかを確認する
- 品質問題が発生時:測定システムが問題の原因でないかを切り分けるための調査として実施する
- 顧客からの要求があったとき:取引先から測定システムの信頼性を示すデータを求められた場合に対応する
- 定期的な検証:測定器の経年劣化や測定者のスキルの変化などを監視し、システムの安定性を継続的に確認する
MSAを実施するメリット

MSAを適切に実施することで、企業は多くのメリットを受けられます。本章では、7つのメリットを解説します。
測定の信頼性が向上する
1つ目のメリットは、測定データの信頼性が客観的な数値で保証されることです。「なんとなく」や「勘」に頼った判断ではなく、事実に基づいた合理的な意思決定が可能になります。
不良品の早期発見・減少につながる
良品を不良品と判定、不良品を良品と判定するなど、測定の誤りを大幅に減らすことができます。結果として、後工程への不良流出を防ぎ、手直しや廃棄にかかるコストを削減できます。
開発・品質・プロセスを改善できる
MSAは、ばらつきの原因が「測定器」にあるのか、「人」にあるのか、「手順」にあるのかを明らかにします。原因が特定できるため、測定器の修理や測定者のトレーニングなど、効果的な改善策をピンポイントで実施できます。
顧客満足度が向上する
安定した品質の製品を継続的に供給できるため、顧客からの信頼が高まり満足度向上につながります。特に、品質要求の厳しい業界では、MSAの実施が取引の前提条件となることもあります。
無駄なコストを削減できる
不良品の削減に加え、不要な工程改善を防ぐことにもつながります。例えば、工程のばらつきが大きいと判断した場合でも、実際は測定システムのばらつきが原因であれば、工程ではなく測定システムを改善しなければなりません。MSAはこのような誤った投資を防ぎ、無駄なコストを削減できます。
教育・スキルレベルが見える化される
測定者間のばらつき(再現性)の評価で、特定の測定者のスキル不足やクセが明らかになることがあります。標準化されたトレーニングを実施するための客観的なデータとして活用できます。
外部監査・認証対応に役立つこともある
IATF16949(自動車産業向け品質マネジメントシステム)などの認証規格では、MSAの実施が求められています。適切に実施し、記録を残すことで、外部監査にもスムーズに対応できます。
MSAを実施する上でのデメリットと対応策

MSAのデメリットを理解し、事前に対策を講じることが成功のポイントです。本章では、5つのデメリットと対応策を解説します。
コスト・工数がかかる
MSAの実施には、サンプルの準備、測定作業、データ分析など、相応の時間と人的リソースが必要です。また、専門的な統計ソフトウェアは費用がかかってしまいます。
対応策
MSAを実施する際には、コストを考慮した上で、得られる情報と照らし合わせた費用対効果の検討が重要です。特に、初期段階では簡便な手法や既存のデータを利用するなど、スモールスタートでMSAの効果を検証することも有効です。
- リスクベースのアプローチ:すべての測定システムを同じレベルで実施するのではなく、製品の重要度や工程のリスクに応じた優先順位付けで重要なものから実施する
- ツールの活用:Excelのマクロや無料の統計ソフト(Rなど)を活用する
専門知識が求められる
ゲージR&RやANOVA(分散分析)など、MSAには統計学の知識が必要です。知識がないまま実施すると、誤った分析や解釈をしてしまうリスクがあります。
対応策
MSAを実施する前に、統計学の基礎知識を習得しておくことが重要です。分析結果の解釈に自信がない場合は、専門家の意見を参考にすることでより正確な判断を下せます。
- 人材育成:社内で統計的品質管理(SQC)に関する研修を実施し、担当者のスキルアップを図る
- 外部専門家の活用:必要に応じて、コンサルタントなどの外部専門家から支援を受ける
結果の解釈が難しい場合がある
分析結果の数値(%GRRなど)が判定基準のボーダーライン上にある場合など、結果をどう解釈し、次のアクションにつなげるかの判断が難しいこともあります。
対応策
- 多角的な視点:統計データだけでなく、現場の状況(測定環境、測定者の意見など)も総合的に考慮して判断する
- 過去データとの比較:過去に実施したMSAの結果と比較し、改善傾向にあるのか、悪化傾向にあるのかというトレンドで評価する
情報を総合的に判断しても結論が出ない場合は、さらに詳細な分析やより精度の高い測定方法の検討が必要となることもあります。また、専門家への相談も有効な手段です。
測定条件が変動すると正しく評価できない
MSAの実施中に、温度や湿度などの環境条件が大きく変動し、サンプルの状態が変化すると、正確な評価ができなくなります。
対応策
- 環境の安定化:できるだけ通常の作業環境下で、かつ環境が安定している状態でおこなう
- 計画の徹底:事前に計画を立て、測定中は計画外の変動要因が入り込まないよう管理を徹底する
やむを得ず環境が変動する場合は、変動幅を記録し、結果の解釈に考慮します。また、サンプルの状態変化についても、測定前後の状態を記録し、変化が測定結果に影響を与えないかの確認が重要です。
転記ミスが起きる可能性がある
測定値を手作業で紙やExcelに入力する場合、ヒューマンエラーによる転記ミスが発生するリスクがあります。一つの間違いが、分析結果全体を歪めてしまう可能性も避けられません。また、手作業での入力作業は時間もかかり、担当者の負担も大きくなります。
対応策
- 測定器からのデータ直接入力:測定器とPCを接続し、測定データを直接ソフトウェアに取り込める仕組みを構築する
- ダブルチェック:手入力が避けられない場合は、入力者と確認者の2名でダブルチェックをおこなう体制を整える
- 帳簿の電子化:帳簿を紙媒体から電子データに移行し、入力ミスや紛失のリスクを低減する
帳簿の電子化は、手書きによる転記作業が不要になります。手作業での転記はどうしても人的ミスが発生しやすく、特に数字や記号の転記ミスはMSAにおける課題の一つです。電子化された帳簿システムでは、データが自動的に連携・集計されるため、転記ミスを大幅に削減できます。また、入力されたデータはシステム内で検証されるため、誤った情報の入力自体を防ぐことも可能です。
中でも「i-Reporter」は、導入社数No.1(富士キメラ総研 2024年8月8日発刊)国内トップシェアを誇る現場帳票システムです。サービス資料を用意しましたので、あわせてこの機会にこちらから無料でダウンロードしてみてください。
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