ISO9001とは、国際標準化機構(ISO)が定める品質マネジメントシステムを評価する規格です。この規格において文書管理は品質マネジメントシステムの運用を支える重要な役割を担っていると位置付けをされています。
この記事では、ISO9001の概要や規格で求められている要素、規格に準拠するメリットなどについて解説しています。文書管理に課題を抱えている、認証を取得して対外的にアピールしたい企業の担当者様はぜひ参考にしてください。
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目次
文書管理の役割

文書管理とは、企業の活動において使用される文書の作成、保管、廃棄などを適切におこなうための管理を指します。
企業が展開する商品やサービスを提供する際には、契約書や発注書、製造指示書など各種文書の作成や受け渡しが発生するため、これらの文書を適切に管理しなければなりません。
また、書類は単にラックに保管するだけでなく、作成・活用・処理・保管・保存・破棄と一連の文書のライフサイクルを踏まえた上で適切な管理が求められます。
例えば契約書の場合、書面には関係者の署名や捺印などの顧客情報や契約情報が含まれるため、鍵付きのキャビネットや、アクセス制限がされたフォルダで保管するなどの取り組みが必要です。また、保管期間が過ぎた後は廃棄しますが、その際にもシュレッダーや、溶解処理を施すなどして、廃棄した書類から情報が漏れないように注意しなければなりません。
このように、ビジネスシーンで使用する文書をライフサイクルの段階別に適切に管理することが文書管理の役割です。
ISO9001とは

ISO9001とは、スイスのジュネーブに本部を置く国際標準化機構(ISO:International Organization for Standardization)が定めた、企業などの組織における品質マネジメントシステムを評価するための規格です。
ISOでは、このISO9001以外にも、国際取引を安心かつスムーズに行えるように、幅広い国際規格を制定しています。
ISOの規格には、商品やサービスそのものに関する規格だけでなく、ISO9001のように企業の特定の活動を評価するものもあります。企業は、ISOの規格に則って行動することで、商品やサービス、企業活動に関して国際的な基準を満たしていることを示すことができます。
なお、ISO9001の原文は英語やフランス語などの外国語で作成されている点が特徴です。日本語に関しては、翻訳版が用意されており、邦訳版をJIS Q 9001と呼びます。JIS Q 9001の内容自体はISO9001と同じですが、日本国内向けの規格として運用されている点を理解しておきましょう。
ISO9001と文書管理の関係
文書管理はISO9001で求められている要素の1つです。そもそもISO9001における文書管理は、以下のように位置付けられています。
- 文書を用いて品質マネジメントシステムの運用を支援する
- そこで使われる文書は適切に管理する文書は適切に管理する
つまり、文書管理は品質マネジメントに直接貢献するものではなく、マネジメントプロセスを円滑に進めるために適切におこなう必要があります。
ISO9001の文書管理で求められること

ISO9001に沿った文書管理をおこなう上では、この規格で何が求められているのかを理解する必要があります。ここでは具体的にどのような点が求められているのかを解説します。
管理する文書は2種類
ISO9001において管理が求められている文書は大きく分けて以下の2つです。
- ISO9001で求められている文書
- 自社で定めた文書
これらの文書はそれぞれどのようなものかについて解説します。
ISO9001で求められている文書
ISO9001で求められている文書とは、その名の通り、規格の中で作成・保管をおこなう必要のある文書のことです。具体的には、以下のような文書の作成・保管が必要とされています。
- 品質方針
- 品質目標
- 業務に関わる人の力量の証拠
- 商品・サービスが求められる品質や機能性を満たしているかを示すレビュー結果
- 商品・サービスのリリースに関する情報
- 内部監査実施の証拠及び結果の証拠
など
上記のような文書に関しては、作成・保管を適切に行わなければなりません。
自社で定めた文書
もう1つの自社で定めた文書とは、先述のISO9001で求められている文書に含まれていないものの、品質マネジメントシステムの運用に有効であると企業が判断した文書のことです。例えば、商品やサービスの品質管理をおこなう際に一般的に用いられる、以下のような文書が該当します。
- 仕様書
- 指示書
- 各種計画書
など
これらの文書を管理するかどうかは、あくまでも自社で判断するものであり、商品やサービス、企業の規模などによっても異なります。そのため、具体的な文書に関しては上記以外にも存在する点を理解してください。
文書の作成・更新
文書の管理だけでなく、必要に応じて適切な文書作成や更新も行わなければなりません。
例えば、品質マネジメントシステムを運用するのに適した形で文書を作成する必要があります。具体的には、紙で作成するのかデータで作成するのか、どの言語を使用するのか、図表はどの形で用いるのかといった点が挙げられます。
また、作成にあたっては文書に適切なタイトルをつける、作成日や更新日、作成者を把握できるようにしておくなど、後々の管理を想定して識別できるようしておくことも大切です。
さらに、作成・更新した文書はそのまま保管するのではなく、作業後に内容が適切かどうかを評価した上で、承認してもらう必要があります。
このように、扱いやすい形式で適切な内容の文書を作成・更新し、チェックや承認といった手順を踏むことが重要です。
文書の保管・管理
作成した文書の保管・管理もISO9001で求められる要素の1つです。適切な保管・管理をおこなうには、「文書に求められる状態」と「管理のために求められる対応」の2つの要素を理解しておく必要があります。
ISO9001における文書に求められる状態とは、以下のような状態を意味します。
- 必要なときに必要な場所で入手でき、利活用できること
- 漏えいや紛失のリスクから守られている
例えば、商品の品質評価の際、具体的な評価項目に関する文書をスムーズに入手し、参照または記入できるように管理しておく必要があります。
また、自社の技術に関する文書や顧客の個人情報が載っている契約書などは、厳重なセキュリティのもとで保管されなければなりません。
先述の通り、ISO9001における文書管理は品質マネジメントシステムを支援する役割があるため、ただ保管するのではなく、利活用のしやすさや安全性などの観点を考慮した上で保管・管理をする必要があります。
管理のために求められる対応とは、以下のような要素を指します。
- 配布・アクセス・検索
- 変更の管理
- 保持・廃棄
必要なときに文書を配布する、アクセスできる、検索できるといった状態にするために、配布方法を決めておく、アクセスの仕方や権限を定めておく、検索できる仕組みを整えることなどの対応が求められます。
また、文書を更新した際には、どの部分が更新されたのかを明確にし、古いバージョンが使われないようにすることや、更新履歴を記録しておくことも、保管・管理において重要なポイントです。
また、保管期間が定められている文書については、期間終了後の廃棄方法を事前に定め、適切に対応する必要があります。
ISO9001で文書管理をおこなうメリット

ISO9001に準拠した文書管理をおこなうことで、企業はさまざまなメリットを得ることができます。ここでは具体的にどういったメリットがあるのか解説します。ISO9001の取得を検討している企業のご担当者はぜひ参考にしてください。
ステークホルダーからの信頼獲得
ISO9001に基づいた文書管理をおこなうことはステークホルダーからの信頼獲得につながります。規格の要求事項に従い適切な文書管理を行い、ISO9001の認証を取得できれば、その事実を企業として公表可能です。
ISO9001を品質マネジメントの規格であることを理解している取引先や関係者からは、品質管理に適切に取り組んでいる企業と認識され、信頼を高められます。
また、ISO9001の認証を取得していることは、文書を安全に管理していることの証拠にもなるため、セキュリティを重視する企業との取引にも良い影響を与えると言えます。
業務効率化
ISO9001に沿った文書管理は、業務効率化の向上にも寄与します。業務に必要な情報をまとめた文書をわかりやすい場所に保管し、検索やアクセスがしやすい状態にしておくことで、必要なときにすぐ活用できるためです。
また、業務に関連する情報を文書にまとめ、保管・管理しておくことで、従業員それぞれが持つノウハウや経験を社内で共有できるため、業務の属人化防止にもつながります。さらに、これらの文書は社員教育にも活用できます。
このように、適切に文書管理をおこなうことは、結果的にスムーズな業務の遂行にもつながります。
セキュリティ向上
強固なセキュリティにより安全な状態で文書を管理できる点もISO9001に準拠するメリットの1つです。ISO9001では、情報漏洩や紛失といったリスクを回避できるよう、文書を安全に管理することが求められています。そのため、認証を取得するには、セキュリティ面の強化が不可欠です。
そのため、ISO9001に準拠しようとすると、必然的に不正アクセスや情報の持ち出し、改善、紛失といった各種リスクを抑えるための取り組みが求められ、結果としてセキュリティ面の強化につながります。
情報共有
業務に関する情報や商品・サービス、顧客情報など、さまざまな情報を文書化して特定の場所に保管しておくことで、情報共有が容易になります。
新たな案件を始める際に、過去の類似案件を確認したい場合でも、ISO9001に基づいて適切に文書が管理されていれば、すぐに過去の文書にアクセスでき、必要な情報を簡単に確認できます。
社内にたくさんのナレッジがあるにも関わらず、うまく共有できていない、活用できていない場合、まずは文書管理に取り組んでみるところから始めてみることをおすすめします。
ISO9001で文書管理をおこなう際の注意点

ここでは、ISO9001に基づいて文書管理をおこなう際に注意すべきポイントをご紹介します。先述のようなメリットがある一方で注意点も少なくないため、それらを踏まえた上で取り組みを進めてください。
コスト負担が増える
ISO9001に基づいて文書管理をおこなう場合、コストが増加することに注意が必要です。これは、ISO9001で求められる要件が多く、それらに対応するためにさまざまなコストが発生するためです。
例えば、セキュリティが強固な場所で文書を管理するために、文書のアクセス性や検索性を高める文書管理システムやオンラインストレージなどを導入することが考えられます。これらのツールは月額制で利用されることが一般的であるため、毎月のコストが発生します。
また、認証を取得するための審査や更新審査などにもコストがかかります。
業務の負担になる
ISO9001の要求事項は多いため、それらに対応するための作業が発生します。文書の整理や作成など、通常の業務とは違う作業が発生するため、担当者の業務負担が増える可能性があります。
また、文書管理を始めた直後は、それまでとは管理方法が変わるため、社内で混乱が生じ、一時的に業務がスムーズに進まなくなる場合があることをご理解ください。
文書管理が形骸化する恐れがある
ISO9001の取得は、対外的なアピール要素となるため取得を目指す企業は多いですが、中には取得が目的となり、文書管理が形骸化してしまうケースもあるため注意が必要です。
例えば、審査をクリアするためだけに、審査直前で形式を整え、あたかも普段から適切に文書管理をしているように装うケースです。このようなやり方は、文書管理の役割から役割から逸脱しています。また、審査前の対応作業が増えるなど業務面でのデメリットも生じます。
効果が出るまでに時間がかかる
文書管理を始めたからといって、すぐに効果が現れるわけではありません。効果を少しずつ感じられるようになるまでには、時間がかかります。そのため、中長期的に取り組む姿勢が必要不可欠です。すぐに諦めるのではなく、辛抱強く取り組み続けてください。
ISO9001で文書管理をおこなう手順

ここではISO9001で文書管理をおこなう際の、具体的な手順を紹介します。認証取得を目指している、文書管理を適切に行いたいといった方はぜひ参考にしてください。
管理対象文書の明確化
まずは、管理対象となる文書がどれなのかを明確にしなければなりません。先ほども説明したように、ISO9001で管理対象となる文書は以下の2種類です。
- ISO9001で求められている文書
- 自社で定めた文書
規格で要求される文書がどれなのか正しく把握するのはもちろん、自社でどういった文書を管理するべきなのかを検討してください。
その際に役立つのが文書体系図です。これは、文書を上位と下位のカテゴリに分け、文書の分類をおこなうものです。文書の種類やレベル感を図で示すことで共通認識を定義でき、認識のずれを防げます。
文書作成
管理対象の文書の中には、これまで作成していなかったものの、保管・管理をしなければならないものもあるため、必要に応じて文書を作成してください。また、新規作成だけでなく、内容が似た文書がある場合などは文書の統合も検討します。
文書管理規程の作成
管理する文書をすべて用意したら、文書管理規程を作成します。これは、文書管理のルールのことです。
文書の形式や付与番号、作成部署、承認者、保管場所、保護方法、保管期間、更新頻度、廃棄方法など、文書管理に関する具体的なルールを定めます。もし社内にすでに文書管理規定があるなら、ISO9001に準拠した形となるように修正してください。
規定を一から作成する場合、「文書管理規定 テンプレート」「文書管理規定 サンプル」といったキーワードでオンライン検索すれば参考となるテンプレートやサンプルが見つかるため作成もスムーズです。
規定の周知及び運用
文書管理規定を作成し、実際に規定に沿って文書管理をおこなう場合、規定を従業員に周知してください。文書管理を現場で実際におこなうのは従業員であるため、具体的にどのようにおこなうのか、何が大切なのかといった点を理解しないまま運用を始めると管理をスムーズに進められません。規定の周知を行った上で、運用を開始してください。
ISO9001で文書管理に取り組む際のコツ

ここではISO9001で文書管理をおこなうにあたってのコツを紹介します。スムーズな管理を実現するためにはさまざまなコツがあるため、ぜひ参考にしてください。
外部コンサルに依頼する
自社で管理対象の洗い出しから規定の作成、運用まですべてを行おうとすると、多大なリソースが必要となるため、外部コンサルタントに一部の作業を依頼するのも一つの方法です。
文書作成や規定の作成などをサポートしてもらえるため、自社でおこなう工数を削減でき、従業員への負担軽減にもつながります。
ペーパーレスでの導入を検討する
文書管理は、必ずしも紙で保管する必要はないため、ペーパーレスでの保管もご検討ください。ISO9001で求められているのは、あくまでも文書が適切に管理されているかどうか、といった点であり、その保管方法に関しては紙やデジタルといった制限はありません。実際にISOはペーパーレスに対して肯定的な立場をとっています。
また、ペーパーレス化によって文書の保管場所を確保する手間も省けるため、結果的に文書管理全体がしやすくなります。また、ペーパーレス化によりオンライン上での文書保管が実現すれば、検索性も高まります。
ペーパーレスを推進する際の注意点
ペーパーレス化の推進にあたっては、セキュリティ対策は必要不可欠です。不正アクセスや情報漏洩といったリスクを回避するためにも、セキュリティソフトの活用や従業員に対するセキュリティ研修の実施などを行ってください。
ツールを活用する
文書管理をサポートするツールを活用することも、文書管理のコツの一つです。 管理文書が膨大な数に及ぶ可能性もありますが、そのようなときにツールを使用していれば、管理負担を軽減できます。主な管理ツールには、以下のようなものがあります。
- 文書管理システム
- オンラインストレージ
- スキャンサービス
文書管理システムは、文書の作成や管理、廃棄といった一連のサイクルを行えるツールのことです。版数の管理や文書の承認などを行えるツールもあるため、ISO9001に沿った文書管理ができます。
また、オンラインストレージはオンライン上にファイルなどを保管するツールです。インターネット環境があればどこからでもファイルにアクセスでき、文書の参照が行えます。
スキャンサービスは、紙の書類のスキャンおよびデータ化をおこなうサービスです。データ化した上で文書を管理したい方におすすめのサービスです。
このように、文書管理に活用できるツールはさまざまですので、ぜひ参考にしてください。
ISO9001に関するよくある質問

最後にISO9001に関するよくある質問とその回答を紹介します。
ISO9001取得までにかかる時間は?
ISO9001の認証を取得するまでの時間は早くても半年程度、通常だと1年〜1年半程度はかかると考えてください。そのため、管理を始めて数カ月で認証が得られないからといって、すぐに諦めてしまうのは早計です。少しでも早く取得したい場合は、外部コンサルタントや各種ツールを活用し、効率的に管理を進めることをおすすめします。
ISO9001取得の難易度は?
ISO9001の取得は、決して難易度が高いわけではありません。規格が求める事項を理解し、適切に対応すれば、十分に取得が可能です。そのためにも、まずは規格の概要を理解しておくことが大切です。
ISO9001の文書の保管期限は?
ISO9001では、文書の保管期間について具体的な規定はありません。そのため、法律やクライアントからの要請などに応じて、適切な保管期間を設定してください。
ISO9001の文書管理方法を適切に理解しよう
今回は、ISO9001の概要や求められる要素、規格に準拠した文書管理のメリット、具体的な管理手順などについて解説しました。ISO9001は、ISOが定める品質マネジメントシステムを評価するための規格です。
規格に準拠した文書管理をおこなうことで、ステークホルダーからの信頼向上や自社の業務効率化など、さまざまなメリットが得られます。
文書管理をおこなう際には、ツールや外部コンサルタントの活用も検討してみてください。自社で対応することも可能ですが、従業員の業務負担が増える可能性もあるため、バランスを考慮することが重要です。今回の内容を参考に、ISO9001に準拠した文書管理に取り組んでください。
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