工場で起きるヒヤリハットの事例と対策。報告書の書き方まで解説

工場で働いていると、ヒヤリハットを経験したことはありませんか。工場で起きるヒヤリハットは、大きな怪我や損失につながる可能性があります。そのため、ヒヤリハットは未然に防ぐことが重要です。

今回は工場で起きるヒヤリハットの事例を基に、対策と報告書の書き方を解説します。ぜひ参考にしてください。

弊社サンソウシステムズでは、導入社数No.1(富士キメラ総研 2023年8月8日発刊)国内トップシェアを誇る現場帳票システム「i-Reporter」の導入支援をおこなっています。

弊社では、導入を検討している方々が安心して導入していただけるように、導入前から課題のヒアリングをおこなっています。

現場のDXに悩みがある方は、サービス資料を用意しましたので、ぜひこの機会にこちらから無料でダウンロードしてみてください。

導入実績3,500社以上

ヒヤリハットとは

ヒヤリハットとは、工場だけでなく身近にも存在します。ヒヤリハットの概要も理解して対策を考えましょう。

ヒヤリハットの基本概念

ヒヤリハットとは、厚生労働省では『危ないことが起こったが、幸い災害には至らなかった事象』と定義されています。仕事中にヒヤッとしたことやハッとしたことで、危ないと感じた事象はすべてヒヤリハットです。

ヒヤリハットは、さまざまな現場で起きています。「些細なヒヤリハットだから報告しなくても大丈夫」と軽く考えていると、大きな災害や損失につながります。職員はヒヤリハットが起きたら必ず報告を上げなければならないことを認識して、責任者は教育を施すことが重要です。

ハインリッヒの法則

ハインリッヒの法則とは、アメリカの損害保険会社の安全技師であるハーバート・ウィリアム・ハインリッヒが損保事故のデータから発見した法則です。大きな事故が1件起きるまでに何件のヒヤリハットが存在しているのかを把握する重要性を説いています。

現在、厚生労働省では、1件の重大事故のウラに29件の軽傷事故、300件の無傷事故(ヒヤリハット)があると記述しています。

参考:hiyarihat.pdf (mhlw.go.jp)

工場のヒヤリハット事例

実際に起きたヒヤリハットの事例を紹介します。

ヒヤリハットの事例は、厚生労働省の「職場の安全サイト」から確認可能です。製造業や加工業の工場で起きた事例を種類ごとにまとめているので、参考にしてください。

事例➀:墜落

業務内容ヒヤリハットの詳細
配送商品の選別収集(ピッキング)倉庫でオーダーピッキングリフトを使用して商品を収集していた際、高さ2.45mから商品に手が届かず、墜落しそうになった。
はしごなど(ケイ素鋼板加工)鍛錬工場で、2人で台車上からケイ素鋼板にウールを掛ける作業中、1人の作業員が作業用椅子を踏み台として使用し、作業終了後に降りようとした際、不安定な椅子のため転落しそうになった。

墜落事故は、一歩間違えれば命に関わる大事故につながるような事象です。工場では、職員が危ない場所で作業することも少なくありません。

事例②:転倒

業務内容ヒヤリハットの詳細
1.2kgダンボール4箱の運搬計1.2kgのダンボールを運ぶ途中、斜路で滑りそうになった。
アーク溶接作業大型鉄骨構造物のアーク溶接作業中、移動時に床に散乱した溶接機のコードに足を引っかけ、転倒しそうになった。

転倒のヒヤリハットは、工場の整理整頓が疎かになっている場合に生じやすい事例です。未然に防ぐことで労災を減らせます。

事例③:激突

業務内容ヒヤリハットの詳細
運搬作業
カウンターバランス型フォークリフトが高荷で後退走行中、進行方向右側から直角にバックで近づいてきたフォークリフトに気づかず衝突した。
相手のフォークリフトも後退走行中で、自車の後退走行左後方には注意不足だったため衝突が発生し、両車の後退警音器の音で互いに気づかなかった。
解体作業午後4時頃、解体工事中に立壁(2m×1.8m)を処理しようとした際、立壁が突然倒れてきて、危うく衝突しそうになった。

激突のヒヤリハットは、人の不注意で起きることもあります。その場合は、作業員の勤務体制や教育指導の内容の改善が必要です。

事例④:落下

業務内容ヒヤリハットの詳細
足場の解体作業工事現場で足場の解体作業中、腕木材を取り外した際に、固定されていない落下防止ネットが原因で、腕木材が道路まで落下した。
運搬作業クレーンで鉄パイプを運搬中、1本掛けの玉掛けワイヤロープから抜け落ち、床面で跳ね返って身体に当たりそうになった。

落下のヒヤリハットも、環境の整備不足や不注意によって起きることが多いです。怪我につながりやすい事故のため、防止できれば労災が削減できます。

参考ページ:https://anzeninfo.mhlw.go.jp/hiyari/anrdh00.html

ヒヤリハットの原因

ヒヤリハットを防ぐためには、原因の明確化が重要です。ヒヤリハットの原因について詳しく解説します。

ヒヤリハットの原因になる5Sについて

ヒヤリハットの原因には5Sと呼ばれる分類があります。

5Sとは、整理(Seiri)、整頓(Seiton)、清掃(Seisou)、清潔(Seiketsu)、躾(Shitsuke)のことで、ローマ字読みの頭文字をとったものです。職場環境の改善や維持を目的としておこなわれる活動を5S活動と言います。

5Sの項目活動内容
整理(Seiri)必要なものと不要なものを区別し、不要なものを排除します。これにより、作業環境が整頓され、事故のリスクが減少します。
整頓(Seiton)必要なものを使いやすい場所に配置し、すぐに取り出せるようにします。道具や材料の定位置を決めることで、探す時間を減らし、効率を向上させます。
清掃(Seisou)職場を常に清潔に保ちます。清掃を通じて設備や工具の異常を早期に発見し、安全性を確保します。
清潔(Seiketsu)整理、整頓、清掃を維持するための標準化をおこないます。ルールや手順を作り、それを遵守することで職場の状態を一定に保ちます。
躾(Shitsuke)決められたルールや手順を守る習慣を身につけ、従業員全員が5S活動を実践できるようにします。継続的な教育や訓練をおこない、意識を高めます。

単に職場をキレイにすることが目的ではなく、作業環境を整備して作業員の意識工場を高めることが重要です。5Sの取り組みがしっかりおこなえれば、安全で効率的な職場を実現できます。

作業の手順が不適切

手順が曖昧だったり、作業手順書が不完全だったりすると、作業者が誤った方法で作業をおこなうリスクが高まります。例えば、手順が抜けており実際の作業環境に適していない場合、ヒヤリハットが発生しやすいです。

設備面の問題

古くなった設備やメンテナンスが行き届いていない機械は、突然の故障や事故を引き起こします。また、設備の配置が適切でなかったり、操作パネルが使いにくかったりすると、ヒヤリハットが発生しやすくなります。定期的な点検と保守作業を実施し、設備の安全性を確保することが重要です。

環境の問題

作業環境が適切でないと、ヒヤリハットのリスクが増加します。例えば、作業スペースが狭くて動きにくい、照明が不足している、通路が障害物で塞がれているなどの問題です。作業環境を整備し、作業者が安全に作業できるようにしましょう。

作業員の問題

作業員が十分な教育を受けていなかったり、注意力が散漫だったりする場合も、作業ミスや判断ミスが発生しやすくなります。作業員に対して定期的な訓練をおこない、適切なサポートを提供することで、安全意識を高めましょう。

ヒヤリハットの対策

次にヒヤリハットを防ぐための方法を紹介します。現状おこなっている対策と照らし合わせてみてください。

チェックシートの徹底

チェックシートとは、作業開始前や作業中に確認すべき項目をリスト化したもので、漏れやミスを防ぐためのツールです。チェックシートでの確認をしっかりおこなうことで、作業手順や安全対策が確実に実施されているかの確認もできます。定期的にチェックシートの内容を見直し、必要に応じて更新することで、常に最新の安全基準を維持しましょう。

危険予知トレーニングをおこなう

危険予知トレーニング(KYT)は、作業現場でのリスクを事前に予測し、対策を講じるための訓練です。この訓練では、作業員が日常の作業環境や手順に潜む危険を理解し、どのように対処すべきかを学びます。シミュレーションやグループディスカッションを通じて、実際の作業に即した危険予知のスキルを養うことができます。

環境や設備の改善をおこなう

作業環境や設備の改善は、安全な作業を確保するために欠かせません。定期的に作業環境を点検し、問題が見つかれば迅速に改善策を講じることが重要です。例えば、照明の改善、通路の確保、設備のメンテナンスなどが含まれます。

作業員のコンディションを維持する

作業員の疲労やストレスが溜まると注意力が低下し、作業ミスが発生しやすくなります。作業員が健康で快適に働けるように、適切な休息やストレス管理のサポートを提供し、コンディション維持に努めましょう。

ヒヤリハット報告書の書き方

ヒヤリハットが起きてから重要なことは、再発防止のために報告書をすぐに書くことです。時間が経つとヒヤリハットの詳細を忘れてしまうためです。具体的な原因を追求できなければ、再発の防止は難しくなります。

さらに報告書を書くときのポイントを具体的に解説します。ぜひ参考にしてください。

5W1Hに沿って書く

ヒヤリハットの報告書では5W1Hを意識しましょう。

Whenいつ起きたのか、いつ気が付いたのか
Whereどこで起きたのか
Who誰が起こしたのか
What何を使用としたときに起きたのか、何がどうなったのか
Whyなぜ起こったのか
Howどのような対策をしたのか、今後はどのような防止策が有効か

5W1Hに沿って記載すると、報告の受け手が発生時のことを理解しやすくなります。具体的な5W1Hを記載するためにも、ヒヤリハットが発生した際は、迅速に報告書を書くことが大切です。

客観的事実を書く

5W1Hに沿って報告書を書く際には、客観的な視点で事実を書きましょう。発生時に起きたことをそのまま記載することが重要です。

報告書は、ヒヤリハットの責任の所在を明確にするものではありません。そのため、あいまいな表現や主観で記載はせずに、事実のみを記載します。

直接的な原因と間接的な原因を明確に書く

ヒヤリハットの原因には、直接的な原因と間接的な原因の両方を記載しましょう。

直接的な原因ヒヤリハットの発生直後に認識できる具体的な要因のこと。
例)作業者の注意力散漫・定期点検を怠った
間接的な原因直接的原因の背後に存在する隠れた要因のこと。
例)教育訓練の不足・管理体制の不備

直接的原因と間接的原因の両方を明確に記載し、包括的な再発防止策を講じることが必要です。

対策案は具体的に記載する

ヒヤリハット報告書では、問題の原因を特定するだけでなく、問題に対する具体的な対策を記載しましょう。
抽象的な対策では、現場でどのような行動を取れば良いかが不明確になるため、効果的ではありません。具体的に、誰が、いつ、どのように実施するのかを明確にすれば、確実に対策を実行できます。

ヒヤリハットを減らす取り組み

ヒヤリハットが起きた際について紹介してきました。最後に、ヒヤリハットを減らすためにはどのような取り組みができるのかを解説します。ぜひ取り入れてみてください。

報告内容の周知・共有

ヒヤリハットの発生を防ぐためには、報告された内容を組織全体で共有することが重要です。共有することで、同様の問題がほかの部署や現場で発生しないように予防策を講じられます。報告内容を迅速かつ広範囲に伝える方法として、報告書をデータ保管する方法をおすすめします。

紙で保管するよりもデータ化することで、より広範囲の職員にデータ共有ができます。それだけでなく、過去のヒヤリハットの報告書を検索して瞬時に確認できる点もメリットと言えるでしょう。

報告を人事評価対象に入れる

報告書を徹底させるためには、報告活動を人事評価に組み込むことが効果的です。積極的に報告をおこなう従業員を評価することで、報告の重要性を全従業員に伝え、報告活動へのモチベーションを高められます。また、報告件数だけでなく、報告の質や提案された改善策の有効性も評価に含めることで、質の高い報告の促進が可能です。

報告の習慣化

ヒヤリハット報告を日常業務に組み込むことも重要です。報告の習慣化により、従業員は日々の業務中に安全意識を持ち続けられます。具体的には、定期的な安全教育や研修を通じて報告の重要性を伝えることや、簡単に報告できるフォームやデジタルツールを導入することが効果的です。これにより、従業員は気軽に報告をおこなえて、組織全体で安全管理を強化できます。

ヒヤリハットの予防・再発防止の工夫をしよう

ヒヤリハットは、事故に至らなかったとしても後々大事故につながる可能性があります。そうなる前に、ヒヤリハットの再発防止や未然に防ぐ工夫を施しておきましょう。

ヒヤリハットの対策には報告書が重要です。報告書を書くことを習慣にするだけでなく、書くこと自体が作業員の負担にならないような仕組化をおすすめします。

現場帳票のシステム化を検討する際、「時間がなくて調査ができない」「導入しても運用できるか不安」「他社製品と比較してどうなのか」といった課題や不安がつきものです。

そのような企業様も安心してください。コンサルティング実績の多い弊社であれば、課題のヒアリングから業務効率化に向けた、目標設定・試験導入、その後の本導入から運用まで伴走支援いたします。

まず、やるべきことを整理するだけでもメリットになります。

お話を伺いたい方は、無料の『ちょこっと相談室』(オンライン)で、お気軽にご相談ください。現状課題のヒアリングから丁寧に対応させていただきます。